お知らせ・ブログ
News&Blog
税務調査の対象期間が延びることはあるか?
2018.02.20
“税務調査の対象期間”について、その詳細を熟知している人は、果たしてどれほどいるのでしょうか。
納税者の方にとって、どれだけの期間が税務調査の対象となるのかは気になる話題です。しかし、その内容について、細部まで把握している人はそれほど多くないのが実態です。
たとえば、税務調査の現場からは次のような声が聞かれます。
「税務署からの事前連絡では、税務調査の対象期間が3年だと言われました。
でも、実際に税務調査がはじまってみると、「あと2年分追加したい」と調査官から言われたのです。
それだと税務調査の対象期間はトータル5年となってしまいますが、それは正当なのでしょうか? また、追加された調査期間には応じるべきですか?」
そこでこちらの記事では、税務調査の対象期間について、その詳細を解説していきましょう。
税務調査の対象期間が延びるのは「非違が疑われる場合」のみ
まずは、関連する条文を確認してみます。少し長くなりますが、読んでみてください。次の通りです。
<国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)>
税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあっては、消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うものに限る。以下同条までにおいて同じ。)において第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
一 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
二 調査を行う場所
三 調査の目的
四 調査の対象となる税目
五 調査の対象となる期間
六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
(2~3省略)
4 第一項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る同項第三号から第六号までに掲げる事項以外の事項について非違が疑われることとなった場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。
※国税通則法より
この条文からも明らかなように、調査の過程で税務調査の調査期間を延ばしたり、あるいは調査対象の税目を増やしたりするには、「非違が疑われることとなった場合」という要件が必要となります。つまり、調査官の勝手な範囲で税務調査の対象期間を延ばすことは許されず、要件を満たした場合のみ期間が延びることとなります。
国税庁の指針も条文の趣旨と同じ
次に、国税庁のホームページで公開されている情報も確認しておきましょう。次のように規定されています。
<調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)>
3 調査時における手続
(2) 通知事項以外の事項についての調査
納税義務者に対する実地の調査において、納税義務者に対し、通知した事項(上記2(3)注2に規定する場合における通知事項を含む。)以外の事項について非違が疑われた場合には、納税義務者に対し調査対象に追加する税目、期間等を説明し理解と協力を得た上で、調査対象に追加する事項についての質問検査等を行う。
※国税庁ホームページ 調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)より
趣旨は国税通則法の条文と同じです。つまり、税務調査の過程で“非違が疑われた場合”にのみ、追加で税務調査の対象期間を加えることができるとされています。たとえば、税務調査における事前通知の段階で調査対象年数が3年だった場合、非違が疑われなければ、5年にすることはできないのです。また、税目の追加も同様です。
税務調査年の“重複”にも注意しよう
国税通則法の条文および国税庁が発表している指針を参考にし、税務署の調査官が、事前通知の内容と相違して「税務調査の対象年数」や「税目」の追加を要求してきた場合の対策について考えてみましょう。
まず、条文や指針にも書かれているように、「どのような非違が疑われたのか教えてください」と確認することが大切です。加えて、すでに税務調査を受けた年分に関しては、基本的に重複して税務調査を受けることはないため、その点も確認しておきましょう。
たとえば、3月決算の会社が平成29年の秋に、過去3期分の税務調査を受けたとします。その場合、対象期間は次の通りです。
・1期前:平成29年3月期の決算
・2期前:平成28年3月期の決算
・3期前:平成27年3月期の決算
このように、税務調査の対象期間は3期前までとなります。
この期間に関しては、今後、重複して税務調査を受けることがないのに加え、非違の疑いがなければ、4期前や5期前などと遡って税務調査に応じる必要もありません。税務調査の対象期間について、今後のご参考になれば幸いです。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
税理士法人レガートは、中央区銀座より様々な情報発信をしております!
税務に関するご相談、税理士をお探しのお客様は、お気軽にご連絡ください。
詳しくは「税理士法人レガート公式サイト」をご覧ください。