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自宅兼事務所の家賃や光熱費が経費と認められず!

2018.01.18

今回は確定申告を控えて少し気になる判決をご紹介します。
自宅で保険代理店を営む個人事業主が、自宅兼事務所の事務所部分の家賃を必要経費としていたものを、必要経費にはならないと否認された事例です。
(平成25年10月17日東京地裁)

事案の内容

事案の内容は次の通りです。

  • Aは、夫と共同で、代理店として生命共済商品及び生命保険商品の販売や傘下代理店の募集等を行っていた。
  • Aは、自身の住宅(駐車場部分を含む)を賃料月額17万円で賃借し、夫、長男及び二男と共に、本件住宅に居住していた。その住宅は2階建てであり、1階に約15畳のリビング・ダイニングキッチンと洗面所、トイレ及び浴室があり、2階に約6.5畳、5.5畳、5.7畳の合計3室の洋室があった。
  • Aは、平成20年及び平成21年当時、夫と共同で複数社の代理店として同社の生命共済商品等の販売並びに傘下代理店の募集・教育・育成等の業務をしていた。
  • Aは、1階はビジネス専用の集会場であり、また、2階の洋室のうち1部屋は業務専用のスペースとして常時使用していたため、それらの面積割合に応じた家賃と水道光熱費を必要経費に算入して確定申告を行っていた。
  • 税務調査によって経費に算入していた家賃と水道光熱費が否認されたため、Aが審査請求、裁判で争うこととなった。

納税者の主張

納税者の主張は次の通りです。

  • 本件住宅のうち、各業務に使用する場所は1階と2階の洋室と明確に区分され、毎日、会議・食事会・パーティー・ミーティングのために使用している。
  • 本件住宅のうち1階のリビングルームに見立てた部屋は、ビジネス専用の集会場であり、置かれている家具什器類は本件各業務のために購入したものであり、生活のためではない。
  • 本件住宅のうち2階の事務所スペースは、事務作業及び個別の打合せをするためのものであり、原告自身が寝室として使用するのは年1、2回しかない。
  • 本件住宅の総面積87㎡のうち、事業用として使用している部分の面積の合計は53㎡であるから、本件住宅のうち本件各業務に使用している割合を60%と算定した。公認会計士も、本件住宅の使用状況を実際に確認した上で、Aの主張する使用割合が正しい旨の意見を述べている。
  • 本件水道光熱費は、本件住宅の本件各業務に使用している割合と同率の60%が相当である。

税務署の見解

一方の税務署の主張は次の通りです。

  • 家事上の経費に関連する経費に関しては、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合の当該部分に相当する金額と規定している。
  • 本件地代家賃及び本件水道光熱費について、Aの事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるためには、その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明確に区分できることが必要である。
  • しかし、そもそも本件住宅がAとその家族の生活の本拠であることからすると、Aが業務の専用スペースであると主張するリビングや2階の洋室1室等を各業務のみに使用していると認めることはできない。
  • また、Aが本件住宅を各業務に使用している部分を明確に区分する証拠は見当たらない。
  • Aが本件地代家賃のうち事業所得の金額の計算上必要経費になると主張する金額は、確定申告から不服申立てに至る経緯において変遷し、何ら合理的な説明をすることができていない。
  • 以上のとおり、本件地代家賃及び水道光熱費は、その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明確に区分できる場合に当たらないから、Aの事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。

裁判所の判断

最終的に東京地方裁判所は次のような判断を下しました。

  • 所得税法45条1項は、衣食住費等の家事費は、事業所得の収入を得るために直接必要な費用ではなく、個人が消費生活を送る上で必要な費用を支出するものであることから、事業所得等の金額の計算上必要経費への算入を認めないこととしている。
  • 所得税法施行令96条1号において、家事関連費を事業所得等の必要経費へ算入するためには、家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき収入を得るための業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明確に区分することができることが必要であると規定している。
  • 家事関連費の支出について事業所得等を生ずべき業務の遂行上の必要性があるというためには、家事関連費の支出が業務の遂行との間に何らかの関連性があるというのみでは足りず、また、単に事業主が主観的に必要であると判断することだけでなく、その必要性が客観的にみて相当であることを要するというべきである。
  • A及びその家族は本件住宅を生活の本拠としている一方、Aは、本件各業務のために事務所等を賃借しておらず、各業務を本件住宅において行っていることから、本件地代家賃及び水道光熱費は、家事関連費に該当する。したがって、本件地代家賃及び水道光熱費のうち、各業務の遂行上必要であり、その必要な部分の金額が明確に区分されている部分に限り、必要経費として算入することができることになる。
  • Aは、本件住宅において代理店や顧客を招いて商品説明やセミナー等を開催していたことが認められるが、本件住宅は全体として居住の用に供されるべき3LDKの2階建て住宅であり、その構造上、居住用部分と事業用部分とを明確に区分することができる状態にないことが明らかであり、Aがその家族と共に本件住宅に居住していることを併せて考えると、Aが本件住宅のリビング等を各業務の専用スペースとして常時使用し、それ以外の用には使用していなかったとは考えられず、むしろ、居宅である本件住宅において、Aが家族と共に家庭生活を営みつつ、各業務を行っていたものと認めるのが相当である。
  • したがって、本件地代家賃のうち本件住宅の全面積にリビング等が占める割合に相当する部分を本件各業務の遂行上必要な金額であるというAの主張を採用することはできない。
  • 仮に、Aが主張するとおり、商品説明やセミナー等のためにリビング等を使用し、当該時間中はリビング等が本件各業務専用に使用されていたことがあったとしても、本件地代家賃のうちで各業務の遂行上必要な部分を明確に区分することができないものといわざるを得ない。
  • 本件水道光熱費についても、本件住宅のうち各業務の遂行のために使用されるいわば専用スペースとして使用されていた部分はなく、リビング等が各業務に使用されていた実態も明らかではないから、水道光熱費についても、各業務の遂行のために必要な部分として明確に区分することができるものはなく、必要経費に算入することはできないというほかない。

 

いかがでしょうか。
裁判所は、Aが住宅の一部で実際に業務を行っていたとしても、そこは全体として居住の用に供されるべき3LDKの2階建ての普通の住宅であり、その構造上、「居住部分」と「事業部分」が分かれているわけではなく、業務遂行に必要な部分を「明確に区分する」ことができる状況ではないため、必要経費には該当しないと判断しています。

個人が事業を始める際に、住居の一部が事業所を兼ねるケースはよくあることかと思います。しかし、本件のように「必要である部分を明確に区分することができること」が必要経費として処理できる要件となりますので、その点を十分注意することが必要になります。

今後の参考になれば幸いです。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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