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車両の盗難損失の損金計上時期は?

2017.06.15

今回は、盗難車両に係る固定資産除却損の損金計上時期について、納税者である法人と税務署が争った事案をご紹介します。(平成15年2月6日裁決)

事案の内容

事案の内容は次の通りです。

  • 婦人既製服輸入業を営む同族法人A社(7月決算法人)は、平成12年11月20日に9,376,000円の車両を取得した。
  • A社は、従前より所有していた車両については、平成12年8月29日に損害保険代理店F社と自家用自動車総合保険契約を締結したが、本件車両の取得に当たり、平成12年11月20日に上記保険契約の被保険自動車を本件車両に変更するとともに、車両価額協定保険特約に基づく協定保険価額を950万円とした。
  • A社は平成13年7月22日に上記車両の盗難にあったため、本件車両に係る固定資産除却損9,376,000円を損金の額に算入し、平成12年8月1日から平成13年7月31日までの事業年度の法人税の申告書を提出した。
  • F社は、平成13年8月31日付の「保険金お支払のご案内」で、本件車両の盗難に係る保険金969万円(内訳は、全損盗難950万円、臨時費用10万円及び盗難代車費用9万円)をA社に支払う旨通知した。
  • A社は、上記保険金の額を平成13年8月1日から平成14年7月31日までの事業年度において益金の額に算入し、法人税の申告書を提出した。
  • 税務調査が行われ、税務署は本件盗難損失のうち本件車両の減価償却費に相当する2,243,208円を超える7,132,792円は損金の額に算入されないとして、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
  • A社は、これらの処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は棄却の異議決定をしたので、国税不服審判所に審査請求をした。

税務署の見解

税務署の見解は次の通りです。

  • 保険を掛ける目的は、将来の偶発的な損失の補填であり、保険金は契約に基づいて支払われるものであることから、損失の全部又は一部が保険金収入によって補填されることが明らかなときには、損失とそれに基因する保険金収入の会計処理は、費用収益対応の原則に従い、同一事業年度において対応させる必要がある。
  • そのため、保険金収入の計上がない時点においては、損失だけを先行して損金の額に算入することはできない。
  • この損失と当該保険金収入との対応については、法人税基本通達2-1-43の注書きにおいて、損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は、保険金により補てんされる部分の金額を除き、その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる旨定めている。
  • 本件事業年度において、当該盗難損失を補填する保険金収入は収益の額に計上されていない。また、本件保険契約では、全損(車両盗難を含む)の場合には協定保険価額の全額が保険金として支払われることになっている。
  • 以上のことから、本件盗難損失だけを先行して本件事業年度の損金の額に算入することはできない。

納税者の主張

一方の納税者の主張は次の通りです。

  • 法人税法第22条第3項第3号に規定する当該事業年度の損失の額は、保険金等で補填される金額を控除すべき旨が明文をもって規定されていない以上、当該事業年度の損失の額から保険金等で補填される金額を除いたものであるとは、当然には解されない。
  • 税務署は、本件盗難損失の計上を認めなかった根拠として、基本通達2-1-43の注書きの定めを引用しているが、これに定める当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は、車両の盗難による損失の額とは別異のものであり、本件盗難損失について、当該通達を適用する余地はない。
  • したがって、本件盗難損失は、法人税法第22条第3項第3号にいう損失の額に該当するので、本件車両が盗難にあった日の属する本件事業年度の損金の額に算入される。
  • 本件保険契約の保険約款には、F社が保険金を支払わない場合としての免責事項が定められており、F社の調査の結果、重過失と認められる場合には、保険金が一切支払われない場合もあることから、請求人が無条件に保険金を受け取ることができるものではない。
  • A社が車両盗難に係る保険金を受領することを認識したのは、F社から「保険金のお支払のご案内」の通知を受けた平成13年8月31日であるから、保険金収入を計上すべき事業年度は、車両価額協定保険特約によって保険金が支払われることが明らかであるかどうかにかかわりなく、上記通知を受けた日の属する事業年度である。

国税不服審判所の判断

最終的に国税不服審判所は次のような判断を下しました。

当審判所が調査したところによれば、次の事実が認められる。

イ.盗難事故が発生した場合、保険者(F社)は被保険者(A社)に保険金を支払う。

ロ.保険金請求権を行使することができる時期は、事故発生の時からである。

ハ.車両価額協定保険特約が付されている場合、保険金を支払うべき損害の額は、全損の場合は協定保険価額とされ、この全損には、車両の盗難事故の場合が含まれる。

ニ.F社の担当者は、当審判所に対し、重過失に基因する車両盗難事故による損害は本件保険契約の保険約款の免責事項に該当せず、仮に重過失があったとしても、保険金が支払われる旨答述した。

 

  • 損失は、資産の滅失等があった場合と、事故等により債務が生じた場合とに区分できるが、前者に該当する災害や盗難による損失は、後者のように債務が確定して初めて損失として認識することができる場合と違って、災害等の事実が生じた時点で損失を認識することができるから、災害等による損失の額は、基本的には、災害等があった日の属する事業年度の損金の額に算入することになる。
  • しかしながら、災害等による滅失等に備えて資産に損害保険が付されている場合においては、災害等により損失が発生すると同時に、保険会社に対する保険金の支払請求権が発生し、当該損失額の全部又は一部が補てんされることとなる。
  • そうすると、適正な期間損益の算定という観点からは、企業会計上の費用収益対応の原則に準じて、当該損失と当該保険金との間に対応関係を求めることが、法人税法第22条第4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によった処理ということになる。
  • したがって、資産に損害保険が付されている場合においては、災害等による損失は、損失額を補填する保険金の額が確定するまで仮勘定とし、その保険金の額が確定した日の属する事業年度において処理することが妥当である。
  • 当審判所の調査によると、A社は本件盗難損失が発生した平成13年7月22日以降、F社に対して本件保険契約に基づいて、協定保険価額である950万円の保険金請求権を行使できることが明らかであり、当該保険金の額は本件事業年度に確定していることから、当該保険金の額である950万円を本件事業年度の益金の額に算入すべきであり、同時に、本件盗難損失も本件事業年度の損金の額に算入することになる。

以上のとおり、本件盗難損失は本件事業年度の損金の額に算入され、また、保険金収入の950万円は益金の額に算入されるべきであるから、本件更正処分は適法である。

 

いかがでしょうか。

付保されている車両の盗難に係る損失は、その保険金が確定した事業年度と同一の年度で損金計上すべきであり、その保険金が確定しない場合には確定するまでの間は仮勘定として処理すべきであるとしています。

今後のご参考になれば幸いです。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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