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ロータリークラブの会費等は必要経費になる?
2016.06.15
今回は、司法書士業を営む事業主が支出した「ロータリークラブの入会金及び会費」について、事業所得の必要経費になるかどうかを争った事件をお伝えします。皆様ならどう考えますでしょうか。(平成26年3月6日裁決)
事案の内容
事案の内容は次の通りです。
- 司法書士であるAは、a市b町○-○において、司法書士業を営んでいた。
- Aは、平成22年4月27日に、Gロータリー・クラブに入会した。
- Aは、平成22年中に本件クラブに支払った入会金○○円及び会費○○円並びに平成23年中に本件クラブに支払った会費○○円について、各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費にそれぞれ算入し、所得税の確定申告書を行った。
- Aに対する税務調査が行われ、当該入会金等については必要経費に算入することができないとして、税務署は所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
- Aが、顧客の獲得につながる当該クラブの活動は事業の遂行上必要な活動であるから、当該入会金等は必要経費に算入することができるとして、その全部の取消しを求めた。
税務署の見解
税務署の見解は次の通りです。
- 必要経費とされるには、その支出が客観的にみて事業の業務と直接の関係を持ち、かつ業務の遂行上通常必要な支出であることを要し、その判断は当該事業の業務内容など個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って実質的に行われるべきである。
- ロータリークラブは、当該綱領に基づき「奉仕活動」を行うことが目的であることから、当該奉仕活動はAが司法書士として行う事業には該当しない。
- 本件クラブの支出の内訳は、会食費、例会会場費の占める割合が最も多くなっていること、及び本件クラブは、司法書士業を営む者が全て入会しなければならないものではなく、個人的な立場で入会するものであって、本件クラブの活動は、事業所得を生ずべき業務に密接に関係するものとはいえない。
- これらのことから、本件各諸会費はAの事業と直接関連するものではなく、かつ、業務の遂行上通常必要な支出であるとは認められない。
納税者の主張
一方の納税者の主張は次の通りです。
- Aの行う司法書士業務は人とのつながりが特に重要であり、紹介により仕事を獲得することが多いものである。Aは、営業活動の一環として本件クラブに入会し、本件クラブの活動に継続的に参加することにより、顧客を獲得している。したがって、本件クラブの活動は事業の遂行上必要な活動に該当する。
- 税務署は、必要経費に算入できない理由として、本件クラブが、司法書士業を営む者がすべて入会しなければならないものではなく、個人的な立場で入会するものである旨主張するが、入会が強制でなく、個人的な立場で入会する商工会議所の入会金及び会費については、必要経費への算入が認められているのであるから、入会の強制の有無や、個人的な立場での入会を理由に必要経費でないとすることは妥当ではない。
- 本件クラブの綱領が、有益な事業の基礎として奉仕の理想を鼓吹し、これを育成することとあるからといって、なぜに本件各諸会費が必要経費に算入できないのかは不明である。
- 法人が支出するロータリークラブの会費等については交際費等の経費として認められており、同じ会費等の支出であるのに、人格の違いで経費計上の取扱いが異なることは、合理性を欠くといえるから、個人事業者においても交際費等として必要経費に算入されるべきである。
国税不服審判所の判断
最終的に国税不服審判所では次のような判断を下しました。
- 司法書士は、他人の依頼を受けて、登記又は供託に関する手続について代理することを業とし、かかる事務を行う対価として報酬を得ることで事業所得を得ているのであるから、本件各諸会費が、Aが司法書士として行う事業所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、当該業務の遂行上必要なものであれば、必要経費に該当することとなる。
- しかし、会費及び入会金の大部分が本件クラブの運営費及び活動費等に充てられており、本件各諸会費もその大部分が本件クラブの運営費及び活動費等に充てられたものと認められる。
- 本件クラブの綱領は、有益な事業の基礎として奉仕の理想を鼓吹し、これを育成することにあるなどとされ、本件クラブは当該綱領に従って各奉仕活動をしていたものであり、具体的な活動についてみても、例会において昼食が出されるとともに事務連絡及び勉強会が実施されたり、親睦会が開催されたりしていたにすぎない。
- Aが本件クラブの会員として行った活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動は、登記又は供託に関する手続について代理することなど司法書士法に規定する業務と直接関係するものということはできず、また、例会や親睦会の活動が司法書士としての業務の遂行上必要なものということはできない。
- したがって、本件各諸会費が、Aの司法書士として行う事業所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、当該業務の遂行上必要なものであったと認めることはできない。
- なお、法人は、事業遂行又は所得獲得を目的として設立されるものであり、その活動は全て事業遂行又は所得獲得のために行われる結果、その活動により生じた支出を損金として益金から控除することが認められているのに対して、個人は、事業遂行又は所得の獲得活動の主体であると同時に「私的な消費活動の主体」でもあり、その支出には所得の獲得活動に関連した必要経費の性質をもつものがある一方で、消費支出(家事費の支出)の性質をもつものがあるため、所得税法では同法第37条で必要経費を規定しながら、同法第45条で家事費及び家事関連費について必要経費に算入しない旨を規定し、収入を得るために支出する費用とはみられないものを必要経費から除いているのである。
いかがでしょうか。ロータリークラブの他、ライオンズクラブも同様の解釈になるものと思われます。個人事業の場合には、これらの諸会費等は必要経費になりませんのでご注意ください。
今後の参考になれば幸いです。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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