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「相続税調査における税務署内の準備調査(1)」
2016.02.17
税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.106)
■「相続税調査における税務署内の準備調査(1)」
相続税の税務調査が行われる場合に、税務署が事前にどのような準備をしているのかを今回と次回の2回に渡ってお伝えしたいと思います。
事前準備のお話しの前に、まずは税務署がどのようにして人が亡くなった情報を入手するかについて述べてみましょう。
情報の入手は「戸籍法第86条」と「相続税法第58条」からスタートします。
●戸籍法第86条(死亡及び失踪)
死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から七日以内(国外で死亡があったときは、その事実を知った日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
2 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他法務省令で定める事項
3 やむを得ない事由によって診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。
●相続税法第58条(市町村長等の通知)
市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する日の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。
人が亡くなりますと、その親族等は死亡した人の住所地の市町村役場に7日以内(海外死亡時は3ヶ月以内)に死亡届書を提出しなければなりません。そして、その死亡届書を受理した市町村役場は、死亡届書を受理した日の翌月末までに所轄税務署長にその情報を通知する仕組みとなっています。
つまり、人が亡くなると、税務署にはその情報が自動的に入るようになっているのです。
死亡情報を受けた税務署は、住所地の市町村から固定資産の名寄帳を取り寄せ、不動産を所有しているかを確認します。不動産を所有している場合には法務局から登記情報も取り寄せます。
過去に確定申告をしている人であれば、過去の確定申告書の内容を確認します。確定申告書からはその人が生前にどのような収入があったかがわかります。家賃収入や駐車場収入の申告があった人であれば、その物件に関する固定資産情報や登記情報を入手して所有不動産の状況を確認します。配当金の申告があった人であれば、どの銘柄をどれだけ保有していたかがわかります。土地等の売却の申告があった人であれば、納税後の売却代金がいくら位残っているかを推定します。
また、生命保険料控除をしている人であれば生命保険の契約内容を確認し、保険金の支払いがあるかどうかを推測します。
亡くなった人が同族会社の役員であった場合には、その同族会社の法人税の申告書もチェックします。法人税の申告書からは、その会社の株式を保有していたか、会社との債権債務があったのか、などが確認できます。
更に、税務署内では「法定調書」や「取引資料箋」といった書類から個人に関するデータベースが構築されており、亡くなった人の様々な情報がそこからも入手することができます。
このようにして、税務署内部だけでも沢山の情報が入手できるため、それらの情報から相続税がかかるかどうか、おおよその想像を働かせます。
そして、相続税の申告が必要だろうと思われるケースでは「相続税の申告書」を、相続税がかかるかどうか微妙なケースでは「相続についてのお尋」という文書を、相続人宅に郵送することになります。
しかし、これらはあくまでも税務署側の判断と都合で行っている、いわば行政サービスの一環ですので、税務署から書類が送られてこないから申告が必要ないということではありません。相続税は原則として「自ら申告納税するもの」ですので、申告忘れとならないよう注意する必要があります。
次回は、税務署が外部からどのように情報収集するかをお伝えいたします。
(つづく)
今回もお読みいただきありがとうございました。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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