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「分割支給の役員退職金を巡った争い」

2015.09.25

税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.101

 

■「分割支給の役員退職金を巡った争い」

 今回は分掌変更による役員退職給与を分割で支給し、それぞれ支給した各年度で損金に算入したことに対して、税務署がその損金性を否認したことから争いになった事案をご紹介します。

 この事案は、平成27年2月26日の東京地裁で判断され、その判決結果は納税者の勝訴、税務当局の処分が全部取り消しとなりました。
 

○事案の内容

 原告A社は、その創業者である役員甲が代表取締役を辞任して非常勤役員となったことに伴い、甲に対する退職慰労金として 2億5000万円を支給することを決定し、平成19年8月期に7500万円を支払い、さらに翌期にその一部である1億2500万円(第二金員)を支払い、損金の額に算入、源泉所得税額も納付しました。

 ところが、税務調査において「退職給与に該当しない」として更正処分等を受け、また、源泉所得税額について納税の告知処分等を受けたことから、各処分の取消しを求めたという事案です。
 

○東京地裁の判断

 本件第二金員は、退職慰労金の一部として支払われたものであり、法人税法上の退職給与に該当し、かつ、本件第二金員を現実に支払った 平成20年8月期の損金の額に算入することができるというべきである。

 したがって、本件更正処分等は、本件第二金員が退職給与に該当しないことを前提としてなされた点において違法であるというべきである。

 そして、本件第二金員が退職給与に該当するものとして 平成20年8月期の損金の額に算入した上で、平成20年8月期の法人税に係る所得金額及び納付すべき法人税額を算定した結果、本件更正処分のうち、当初申告所得金額、納付すべき法人税額を超える部分及び本件過少申告加算税賦課処分は、いずれも違法であり、取消しを免れない。

 

 法人が役員に支給する退職金で「適正な額」のものは、損金の額に算入することができます。そして、その退職金の損金算入時期は、原則として、「株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日」の属する事業年度となります。

 ただし、法人が資金繰りの都合等で分割払いした場合には、「退職金を実際に支払った日」の属する事業年度において損金の額に算入することも認められます。
 

 大原則は「株主総会の決議等で具体的な金額を決定する」ということになります。そのためも役員退職金規定を整備して後日の税務調査に備えることが大切となります。

 今後のご参考になれば幸いです。

 

(つづく)

 

今回もお読みいただきありがとうございました。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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