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「税務調査を録音することの是非」
2015.08.25
税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.99)
■「税務調査を録音することの是非」
今回は、税務調査の際に録音することの是非と、録音テープや録音データは証拠能力が有るか否か、という問題を考えてみたいと思います。
税務調査の場面において納税者と調査官との間でトラブルになるものの一つに「言った、言わない」があります。そんな時に必ず、「録音しておけば良かった・・」と思われることが多いと思います。
それでは、税務調査を録音することは可能でしょうか。
正面から「録音しますのでいいですか?」と尋ねると、「いいですよ。」などと答える調査官はまずいません。決まって「録音はやめてください。」という返事が返ってきます。
これは、公務員の「守秘義務」の観点から禁止を求めるものだと言われています。つまり、録音したデータが絶対に流出しないという保障はなく、仮に流出してしまい全く関係のない第三者に知れ渡ってしまった場合には、守秘義務違反を問われることとなり、それを恐れて録音の禁止を求めてくるのです。そして、その見解には合理性があると認められているのです。
したがって、録音する場合には無断で行うしかありません。では、無断で行う録音は違法となるのでしょうか。
例えば自分が参加している会議で録音することを考えてみましょう、その録音は自分の会話を「記録」することであり「盗聴」とは異なります。「盗聴」は反社会的手段であり違法行為となります。しかし、自分が臨席し答弁する税務調査を録音することは違法なものではないといえます。
次に、無断で録音したデータに証拠能力があるかという問題があります。これに関しましては、昭和52年7月15日の東京高裁の判決で次のように示されています。
「話者の同意なくしてなされた録音テープは、通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らかであるから、その証拠能力の適否の判定に当つては、その録音の手段方法が著しく反社会的と認められるか否かを基準とすべきものと解するのが相当である。」
この東京高裁判決では、「その録音の手段方法が著しく反社会的と認められる場合に証拠能力を否定すべき」としております。つまり、原則は証拠能力があるが、録音の手段方法が著しく反社会的と認められる場合には否定すべきという判断をくだしているのです。したがって、それが自己に有利な言質をとるように誘導したものでない限り、無断で録音したものであっても有効な証拠になるということになります。
税務調査に違法性があった場合には、その違法性は納税者が立証しなければなりません。「言った、言わない」のリスクヘッジのためにも録音は有効であり効果的といえます。
しかし、税務調査の場面では正面から聞いては録音の許可はでませんので、秘密録音で対応するのが現実的な方法といえます。
今後のご参考になりましたら幸いです。
(つづく)
今回もお読みいただきありがとうございました。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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