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「タワーマンションを使った相続税の節税が否認!」
2015.06.12
税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.94)
■「タワーマンションを使った相続税の節税が否認!」
生前に高額なタワーマンションを購入して相続税の節税を図ったところ、国税当局から否認されたため不服申立をして争った結果、納税者が負けた事案が公表されましたのでご紹介いたします。(平成23年7月1日裁決)
◯ 事実関係は次の通りです。
・平成19年7月4日、被相続人A氏は、○○病院に入院した。
・平成19年8月1日付で、A氏名義で、某タワーマンションを対象とし、媒介価額を293,000,000円とする一般媒介契約が締結された。
・平成19年8月4日付で、A氏名義で売買金額293,000,000円としたマンションの売買契約が締結された。
・平成19年8月16日、A氏へマンションの所有権移転登記がされた。
・平成19年9月3日、A氏は、□□病院に転院したが、その後退院することなく、△月△日に死亡した。
・平成19年11月13日、相続人B氏は、マンションにつき、相続を原因とする所有権移転登記をした。
・平成20年2月2日付で、B氏は媒介価額を328,000,000円とする、本件マンションの一般媒介契約を締結した。
・平成20年7月23日付で、B氏は代金285,000,000円でマンションの売買契約を締結し、売却した。
◯ 税務署の見解は次の通りです。
・過去の事実関係の結果、平成18年10月6日以降、A氏には意思能力が欠缺していたと認められる。
・従ってA氏からB氏に対しマンション購入の委任があったとは認められない。
・本件は相続税の節税を意図して、A氏の財産を現金からマンションに化体させたものと認められる。
・マンションの相続税評価額は、マンションの取得に充当した現金(293,000,000円)として評価するのが相当である。
◯ 相続人Bさんの主張は次の通りです。
・A氏は入院前から入院中にかけて、B氏に対しマンションの購入を指示し、B氏はA氏の指示に基づき、A氏の手足となってマンションを購入したものであり、マンションの購入の効果はA氏に帰属する。
・A氏は、平成19年9月8日夕方、最後の遺言をしており、その時まで意思能力があった。
・従って、A氏に意思能力があったことは明らかであり、上記委任契約は有効に成立しているから、売買契約の効力はA氏に帰属する。
・相続財産はマンションであり、その評価額は評価基本通達に基づき評価した価額(58,018,224円)とすべきである。
◯ 国税不服審判所の判断は次の通りでした。
・マンションの購入目的は、相続税の節税にあることが認められる。
・A氏がマンションを訪れたことはなく、B氏が、たまに窓を開けて水を流しに行く程度で、マンションを利用した事実は一切ない。
・A氏死亡の約4か月後にはB氏はマンションの売却を依頼する一般媒介契約を締結し、285,000,000円で売却している。
・マンション近傍の基準地の標準価格の動向は、ほぼ横ばい状況にあった。
・マンションの購入価額とマンションの評価額との差額が多額であることを認識し、差額234,981,776円について相続税の課税価格を圧縮し相続税の負担を回避するために本件売買契約に及んだことが認められる。
・このような場合には、マンションは評価基本通達の定めによらず、他の合理的な方法による評価が許されるものと解するのが相当である。
・相続開始日の前後における基準地価がほぼ横ばいであること等を参酌すると、相続開始時におけるマンションの時価は取得価額とほぼ同等と考えられるから、マンションは293,000,000円と評価するのが相当である。
以上のことから、問題となったマンションは不動産としての相続税評価額ではなく、相続開始時の時価(今回の場合には結果的に購入価額)が相続税の課税価額と認定され、相続税が課されました。
今回のケースにおいて、マンション購入後にAさんやBさんのご家族が住居として利用していたとか、第三者に賃貸していたということであれば、違う結果になったのではないかと思います。
巷では「タワーマンションを買うと相続税の節税になる」といった話が聞かれますが、「買っただけ」では上記のような問題につながる危険性があります。タワーマンションを購入するための経緯、目的、経済的合理性、そして購入後の利用状況がポイントであることをご認識ください。
今後のご参考になれば幸いです。
(つづく)
今回もお読みいただきありがとうございました。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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