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コンサルタント料は譲渡費用になるか
2015.05.22
不動産を売却する際に支払った「コンサルタント料」が譲渡費用に含まれるか否かが争点となり、納税者と税務当局が争った事案が公表されましたのでご紹介いたします。(平成26年6月4日裁決)
事案の内容
事実関係は次の通りです。
- Eさんが所有するアパートが老朽化したため、取り壊してその土地を売却することになった。
- アパートに住む賃借人への立ち退き要請や不動産業者との折衝などを親族が主宰するL社に一任した。
- 土地が売却できたEさんは、売却代金の50%をコンサルタント料の名目でL社に支払い、これを譲渡費用として所得税の申告を行った。
- 税務署は、コンサルタント料は譲渡費用には該当しないと判断し、更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
- Eさんは異議申立をしたが異議審理庁はこれを棄却、納得のいかないEさんは不服審判所に審査請求を行った。
納税者の主張
Eさんの主張は次の通りです。
- L社は、本件建物の賃借人が亡くなった際に風評被害の対応策を助言しており、当該助言が本件土地の譲渡価額を増加させるものであった。
- L社は、立ち退き交渉のために賃借人Pを100回以上訪ねていた。
- L社は、本件賃借人らの立退きに関する助言をしており、当該助言は本件土地を譲渡するために必要なものであった。
- L社は、本件土地の譲渡の交渉先を複数紹介するなどの助言をしており、当該助言は本件土地を譲渡するために必要であったといえる。
国税不服審判所の見解
国税不服審判所の見解は次の通りでした。
- 本件土地を譲渡した際には既に建物は取り壊されて存在していないため、L社の助言と本件土地の譲渡価額との間には関連性は認められない。
- L社の助言が本件土地の譲渡価額に影響を与えたことをうかがわせる事情もないため、L社の助言が土地の譲渡価額を増加させるものであったとはいえない。
- Pが退去したのは本件土地を譲渡する6年以上も前のことであり、Pの建物からの退去は本件土地の譲渡のためのものであったとは認められない。
- L社の行為は、本件賃借人らとの立退交渉でもなければ、立ち退きのための内容証明郵便の文章の作成でもなく、本件賃借人らの立退きを実行するために必要なものであったとはいえない。
- Eは、結局、L社が紹介した不動産業者ではないQ社に本件土地を譲渡したことから、L社が不動産業者を紹介したこと等と本件土地の実際の譲渡との間には関連性が認められない。
以上のことから、L社が本件建物の賃借人の対応・立退き・本件土地の譲渡先探しに関するコンサルティング業務等を行い、また、その対価の支払いをしていたとしても、その費用は土地の譲渡費用には該当しないと判断されました。
不動産の譲渡の際に支出された費用が譲渡費用にあたるかどうかは、「一般的、抽象的に資産を譲渡する際に必要な費用かどうか」ではなく、「客観的にその譲渡を実現するためにその費用が必要かどうか」で判断することになります。
その内容によっては難しい部分もありますが、今後のご参考になれば幸いです。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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