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《突然訪れる相続税の税務調査》(第2編)

2014.01.25

税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.64

 

≪突然訪れる相続税の税務調査≫(第2編)

 

■「税務調査は4件に1件の割合」

 

ベテラン調査官は、ぱらぱらとAさんの通帳をめくり、若い調査官が何やら熱

心にメモを取る。一通り確認が終わると、Aさんが別の部屋から持ってきたアル

バムを見始めた。

午後4時。応接間に戻ったAさんに、ベテラン調査官が尋ねた。

 

調査官 「奥様のX銀行の口座に2000万円分の定期預金がありますね」

Aさん 「ええ、私の預金です」

 

調査官 「専業主婦でご自分の収入がなく、ご主人から『贈与も受けていない』と

おしゃっていましたが、なぜ、これほどの残高があるのですか」

Aさん 「……、それは夫から渡された生活費で余ったお金を私が貯蓄したものです。

子どもにはお金に関して厳しく育てた分、あまり知られたくなかったので

……」

 

隣に座る税理士の顔が青ざめる。税理士も知らなった話だからだ。

 

調査官 「お金の出どころがご主人となると、これは事実上、ご主人の財産になりま

すね。名義は奥様でも『名義預金』として申告していただく必要がありま

す。つまり、相続財産の申告漏れということになりますね」

…………………………………………………………………………………………………

 

Aさんは後日、税務署の指摘に従って相続税を修正申告。追加の相続税のほか

過少申告加算税や、延滞税として合計で約350万円を納めることになりましたが、

相続税の計算の仕組み上、事情を知らなかったAさんの子ども3人にも相続税の

追徴は生じます。

 

これによって、Aさんの家族関係はぎくしゃくすることになってしまいました。

 

相続税の税務調査は、だいたい4件に1件の割合で行われています。すべてを網

羅的に調べるのは、国税当局側も人手が足りません。そこで、提出された申告書を

過去に収集した所得のデータなどと照らし合わせ、所得水準と比較して財産が過少

でないかといった点を見ます。

 

また、各金融機関へ家族名義を含めた口座の照会も行い、おおよその調査対象の

目星を付けるのです。その後、被相続人や相続人と取引のあった銀行へ行き、生前

に不自然な預金の引き出しや送金がないか、口座の動きを徹底的にチェックします。

 

つまり、相続人に電話がかかってきた時点では、すでに事前調査が終わっており、

家族の財産はほぼ把握されていると考えたほうがよいでしょう。

調査官による質問や自宅での現物の確認は、すべて周到な狙いのもとに行われて

います。家族の職業などを聞くのは、収入に比べて多過ぎる資産を持っていないか

を確認するものであり、被相続人の趣味を尋ねることで、ゴルフ会員権などの資産

があるかどうかも分かります。

 

旅行のアルバムを確認したのは、Aさんの言葉にウソがないかを見抜くためです。

自宅の中の確認は、主に金融機関とのつながりをチェックします。被相続人の手帳

や日記、机の中を見せてほしいと頼まれることもありますが、これも生命保険や預

金などの記録を示す手がかりがないかを探しているのです。

 

Aさんの場合、生前贈与に関する質問に、きっぱりと「ない」と答えたのがまず

かったのです。贈与には年110万円までの非課税枠がありますし、原則として6年の

時効(除斥期間)もあります。

 

むしろ、「生前贈与があった」と答え、税務上問題とならないような説明をする

べきだったのです。

 

 

そもそも、誤解を招くような預金などがある場合は、あらかじめ申告書で積極的に

説明しておけば、税務調査の対象となる確率を低くすることもできます。

 

そのためには、相続税の申告前に家族でしっかり話し合い、税理士とも信頼関係

を築いて包み隠さず話しておくことが大切になります。

 

(つづく)

 

今回もお読みいただきありがとうございました。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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