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「海外慰安旅行は福利厚生費か給与か」

2015.03.18

税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.89

 

■「海外慰安旅行は福利厚生費か給与か」

 

会社が負担するレクリエーション等の福利厚生行事が行われた場合、従業員は雇用されている関係上、必ずしも希望しないレクリエーション行事にも参加せざるをえない面があります。そのため、従業員等の慰安を目的として社会通念上一般に行われていると認められるレクリエーションの場合にはあえて課税しないこととされています。

しかし、これが海外旅行となった場合にはどう扱われるでしょうか。
会社のレクリエーションとして海外慰安旅行を実施したところ、税務調査で役員・従業員に関しては「給与」、取引関係者は「交際費」であると指摘され、争いとなった事案がありますのでご紹介します。(平成8年1月26日裁決)

 

事実関係は次の通りです。

○平成3年、観光を目的とした「シンガポール3泊5日の旅」、目的地における滞在日数3泊4日、参加者7人、一人当たりの金額約26万円

○平成4年、観光を目的とした「アメリカ西海岸5日間の旅」、目的地における滞在日数3泊4日、参加者9人、一人当たりの金額約45万円

○平成5年、観光を目的とした「カナダ5日間の旅」、目的地における滞在日数が3泊4日、参加者10人、うち1人は社員の家族、2人は取引先の社員、一人当たりの金額約57万円

 

会社は次のように主張しています。

○会社が実施した各旅行は、旅行費用の大部分は航空運賃に費やされているもので、宿泊及び飲食等は決して豪勢なものではなく、会社が負担した各旅行に係る費用は、福利厚生費として社会通念上一般的に妥当な金額である。

○旅行期間(目的地における滞在日数)が4泊5日以内、全従業員の半数以上が参加するという、税務上の規定も満たしている。

○前回の税務調査において、調査担当職員から「従業員等の慰安旅行に係る費用は福利厚生費として処理すれば全額損金の額に算入できる」旨の説明があった。

○会社は、その説明に従って各旅行に係る費用を福利厚生費として損金の額に算入したものである。

 

国税不服審判所では次のような判断を下しました。

○従業員等の慰安旅行は、運動会、新年会、忘年会等のレクリエーション行事と同様、従業員等の慰安、社内の親睦・融和及び人間関係の緊密化等を図るとともに、勤労意欲の向上を目的として行われる福利厚生行事の一つである。

○従業員等の慰安旅行が社会通念上一般的に行われていると認められるレクリエーション行事であるか否かの判断に当たっては、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者及び参加従業員の負担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきである。

○通常はあえて課税しないことの趣旨からすれば、参加従業員の受ける経済的利益の価額、すなわち会社の負担額が重視されるべきである。

○経済的利益の価額が多額であれば、あえて課税しないとする根拠を失うと解するのが相当である。

○本件各旅行は、従業員の慰安等を目的とした観光旅行であるが、本件各旅行において会社が負担した参加者一人当たりの金額は、あえて課税しない金額より多額であることが認められる。

○したがって、本件各旅行が社会通念上一般的に行われている福利厚生行事と同程度のものとは認められない。

 

以上のことから各旅行費用は、役員・従業員に係るものは給与を支給し、取引先の社員に係るものは交際費等を支出したと認めるのが相当と判断しました。

また、会社の従業員の家族に係るもの(経済的利益)に関しては、いったんその従業員が会社から享受してその家族に贈与したものと考え、当該従業員に対する経済的利益の供与(給与)と認めるのが相当であるとしました。

慰安旅行に関しては、税務調査で争点となることが多々あります。

国税庁では、給与課税する理由として旅行期間(現地滞在4泊5日以内)についてしか触れてなく、金額的な面には触れていません。そのため、いくらまでなら問題ないのか疑問が残るところですが、給与課税を確実に避けるのであれば、会社負担額が10万円以内と考えるのが安全といえます。

 

今後のご参考になれば幸いです。

 

(つづく)

 

今回もお読みいただきありがとうございました。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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