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大学在学中の長男に給料を払ったら?
2014.10.23
同族会社において、社長の親族に給与を支払うケースはよくあると思いますが、まだ大学を卒業していない「学生」の子に給料を支給した場合には、税務署はどうみるでしょうか?
今回はこのような内容について、過去に税務署と争いになり、国税不服審判所の審理事案になった実例がありますので述べてみたいと思います。(平成4年11月18日裁決)
事案の内容
事実関係は次の通りです。
製造業を営む株式会社Pは、代表取締役社長A男の長男であるB男に対して、平成2年3月期に280万円、平成3年3月期に280万円の合計560万円を従業員の給料として支給し、経費処理していました。
ところが、税務調査において、B男に支給された給与は全額、社長であるA男に対する給与(役員報酬及び役員賞与)と認定し、更正処分したのです。
会社の主張
会社の主張は次の通りです。
- B男は会社の従業員であり、将来は会社及び同族関係法人のC株式会社のリーダーとして、従業員の教育指導をするにふさわしい専門技術及び社会学を学ばせるために、会社の業務命令で○○大学へ進学させている。
- 会社は今後、採用した従業員が優秀であり、かつ、その従業員が進学を希望すれば高校及び大学等に通学させる方針がある。
- 会社は、従業員を大学等に通学させて、給与及び賞与等の額を損金の額に算入している会社が多数あると聞いている。
- 会社が社会保険事務所長に対してB男が社命で通学していること説明した結果、B男は従業員として健康保険及び厚生年金の加入が認められている。
- B男は、夏休み等で一時帰省した時、会社の業務であるコンピユーター入力事務及びマシン作業等の教育指導を受けており、かつ、会社の業務が多忙な時、図面作成やその他の雑業務に従事している。
従って、税務署の処分は違法であるから、その全部を取り消すべきであると主張しました。
税務署の見解
これに対して、税務署は次のように反論しています。
- 会社はB男に対して従業員としての管理等をしておらず、同人が会社に勤務した事実も認められない。
- 会社は代表取締役A男がその株式の過半数を所有する同族会社であり、代表取締役A男がその事業を主宰している。
- B男は進学のためS県に居住することとなったが、B男に対する給料名義の金員は、代表取締役A男の妻が受け取り、管理し、代表取締役A男の報酬等と併せてB男の生活費等に充てられていた。
国税不服審判所の判断
最終的に国税不服審判所では次のような判断を下しました。
① 会社は、B男を会社の従業員として採用及び任用したとする書類の作成並びに保管がされていない。
② 会社は、B男に社命で本件進学をさせたとする社内稟議書等の書類の作成並びに保管がされていない。
③ 会社は、B男の本件進学に係る履修状況等の報告を求める等の管理及び監督をしていない。
④ 会社は、従業員の勤務時間をタイムカードで管理しているが、B男が出社したとする夏休み等の期間のB男のタイムカードの管理が保存されていない。
⑤ 会社の社内規定には、会社の従業員を高校及び大学等へ進学させるとする定めがない。
以上の事実が認められることから、本件給与をA男に対する役員報酬と認定した税務署の判断は相当であるとし、会社の主張する更正処分取り消しの請求を棄却しました。
いかがでしょうか。同族会社における同族関係者への給与につきましては、その勤務実態がどうかを、税務当局は様々な角度から調査します。
他の従業員さんと同様に勤務の実態があるか、役員であれば経営への参画状況がどうか、社内での書類や経費精算の状況はどうか、すべて実態で判断しますので、勤務実態があることを説明できる状況証拠を揃えておくことが重要といえます。
今後の参考になれば幸いです。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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