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「相続税の税務調査を避けるには」
2014.06.22
税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.74)
■「相続税の税務調査を避けるには」
相続税の税務調査は、できれば誰しも避けたいものです。自宅を訪ねた国税調
査官は、被相続人の過去や相続人との関係などプライベートな質問をするほか、
過去の預金通帳なども詳しくチェックします。
とりわけ、相続税の申告書に多くの疑問点があると、税務調査はやってきます。
税務調査が入る確率を下げるには、申告書の作成時点からあらかじめそうした疑
問を解消し、税務署に不審を抱かせない申告書を提出することが肝心です。
税務署が不審に思う典型的なケースは、被相続人が亡くなる直前に、被相続人
の口座から多額の出金がある場合です。
2年前に70歳で亡くなったAさん(男性)を例に考えてみましょう。
元会社経営者で資産家のAさんは、亡くなる4年前から断続的にまとまった現
金を引き出し、その総額は5000万円にものぼっていました。この5000万円の行方
がわからないままでは、当然に税務署は相続財産隠しを疑うことでしょう。
しかし、Aさんは実際には6年前からがんを患い、高度治療が受けられる遠方
の医療施設に通院や入院を繰り返していました。そのため、多額の医療費が生じ
ていたのですが、それ以外にも付き添い人の宿泊代や見舞客のもてなしなどの費
用も相当かかっていました。すでに妻を亡くしていたAさんは、自分一人では管
理しきれないため、会社経営を継がせている長男にその資金の管理を託していま
した。
相続税申告の依頼を受けた税理士は、Aさんの口座から長男に渡されていた金
額や、Aさんのためにかかった費用などの聞き取りを始めました。
◇残していた領収書が幸い
Aさんの所得税の申告で医療費控除を適用するため、長男は領収書を保管して
いました。また、親戚など見舞い客の宿泊代の領収書も、長男がAさんに報告す
るため、整理して残されていたのは幸いでした。口座の記録や領収書などから、
Aさんから長男の口座へ移動したのは総額5000万円のうち3000万円。その中でA
さんのために使った金額は2500万円と判明。そのため、差額の500万円は「名義
預金」として申告することにしました。
しかし、残る2000万円の行方が判明しません。長男に聞き取りを進めるうちに、
4年前に400万円をかけて自宅のリフォームをしていたことが分かりました。また、
領収書が残っていた付き添い人の宿泊代以外にも、Aさんは交通費などとして付
き添い人や見舞客に現金を渡していたほか、Aさん自身の入院のために生活用品
を相当購入していたことがわかりました。こうした金額を積み上げていくと、総
額は1000万円と推定できました。
それでは、最後に残った1000万円はどこへ行ったのか。1000万円を4年間(48
カ月)で割ると、1カ月当たり20万円強となります。Aさんの日常の生活費とし
ては、妥当な金額だと考えられます。税理士はこうして引き出された5000万円の
使途の、おおよそのメドを付けることができました。
◇申告書の疑問点を事前に解消する「書面添付制度」を活用
相続税などの税務申告には、「書面添付制度」という制度があります。税理士
が申告書を作成するに当たり、どんな資料をどの程度確認し、どのように検討・
判断したかや、申告書の数字の算定根拠、数字に表れないさまざまな事情などを
記載した書面を添付する制度で、税務署側が抱きそうな疑問を積極的に解消し、
その申告書の信頼性を高める効果があります。そのため、書面添付のある申告書
を提出することによって、税務調査を受ける確率をぐっと低くすることができる
のです。
ただし、この書面添付制度を活用する場合には、相続人からさまざまな事情を
聴きとったり、資料を確認する必要があるため、相続人と税理士の間で包み隠さ
ず何でも話せるような信頼関係が欠かせません。
税理士はAさんが亡くなった際の相続税の申告において、書面添付制度を活用
して申告しました。そして、その後も税務調査は入っていません。
今回もお読みいただきありがとうございました。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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