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個人事業主のゴルフプレー代は必要経費になるか?(所得税調査)
2023.11.02
経営者や個人事業主の立場になりますと、ゴルフのお付き合いの機会も多く、それに関連する支払いを必要経費にしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
今回は個人事業主が同業者とプレーしたゴルフ費用が必要経費になるか否かが争われた事案をご紹介いたします(令和2年10月14日裁決)。
事案の概要
今回の事案の概要は以下の通りとなります。
- 税理士業を営む青色申告者のA氏は、接待交際費等を事業所得の金額の計算上必要経費に算入するなどして、所得税及び消費税の申告をしていた。
- A氏の所得税及び消費税に関する税務調査が行われ、調査官から接待交際費の中にある多数のゴルフ代について説明を求められた。
- それに対しA氏は明確な回答をしなかったため、ゴルフ関連費用は事業所得の必要経費に算入できないとして、所得税及び消費税の更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。
- これに納得できないA氏は、指摘された接待交際費は事業所得の必要経費に算入できるとして、当該更正処分等の全部取消しを求めて国税不服審判所に審査請求を行った。
ゴルフプレー代は必要経費に含まれないという国税の主張
本件に関する国税の主張は次の通りです。
- ゴルフに関連する支出の事実は認められるものの、具体的な支出内容が不明であり、さらには家事費と疑われる支出も含まれていたため、質問書をA氏に交付した。
- これに対しA氏は、「総勘定元帳記載の通り」などと記載した回答書を提出するのみで、その後の質問に対しても具体的な回答をせず、また、再質問書に対しては回答できない旨申述した。
- A氏は、本件各費用とA氏の事業との関連性について具体的に立証を行っていないため、本件各費用は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
- また、本件各費用は、各課税期間の消費税の計算上、課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
ゴルフプレー代は必要経費に含まれるという納税者の主張
一方の納税者の主張は次の通りです。
- ゴルフプレー代は、顧客の開拓、取引先の接待、同業者及び金融機関関係者等との懇親や情報収集、本件事業の関連従事者等との親睦及び営業活動への連携を企図したものである。
- そして、その相手先及び目的は、総勘定元帳及び証票類に記載している。
- 顧問先と飲食やゴルフプレー等を共にすることは一般的で、また、新規顧客として期待できる者と飲食等を共にすることも営業活動の一環であり、事業関連性がないとはいえない。
- ゴルフレッスン代は、著名なレッスンプロによるレッスンである。それを受けることが、高額なレッスン代を負担できるレッスン生を顧客にする機会となり、また、ゴルフプレー時の技量不足をカバーし、営業トークの話題にもなる。
- 従って、本件各費用は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができ、また、各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。
国税不服審判所の判断
両者の主張を聴取し、事実関係を調査した国税不服審判所は次のように判断しました。
- 個人事業主は、事業による所得の獲得活動のみならず、私的な消費活動も行っているため、事業所得の金額の計算に当たっては、事業の必要経費と家事費とを明確に区分する必要がある。
- ある支出が事業所得の必要経費として控除されるためには、当該支出が所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、当該業務の遂行上必要なものに限られる。
- そして、これに該当するか否かの判断は、単に業務を行う者の主観的な動機・判断によるのではなく、当該業務の内容や、支出の趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に照らして客観的に行われなければならない。
- A氏が同業者や金融機関関係者等とゴルフプレー等をすることで、A氏の事業に関して有益な影響があり得るとしても、いずれもゴルフプレー等をしなければその目的を達することができない性質のものではない。
- A氏は年間を通して定期的に日曜日にゴルフプレーをすることが多く、また、A氏の配偶者を同伴したゴルフプレー代も接待交際費として必要経費に算入していたことから、これらゴルフプレー代等は、A氏の私的な消費活動として支出された家事上の経費であると評価できる。
- 個人事業主は、事業所得の計算に当たっては、事業の必要経費と家事費とを明確に区分する必要がある。当該ゴルフプレーにおいては、私的な消費活動と認められる部分があり、家事費部分と事業の遂行上必要な部分が明らかに区別されているとは認められない。
- 従って、接待交際費のうちのゴルフプレー代等については事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。そして、必要経費に算入できない金額は「課税仕入れ」にも該当しないと解するのが相当である。
ゴルフプレー代は必要経費に含まれないとされる場合の判断基準
いかがでしょうか。
個人事業主に関しては「事業上の経費」と「家事上の経費」が混在することから、国税不服審判所は、まずは、それらを明確に区分して処理することが必要であると述べています。
そして、「事業上の経費」と区分されたもので、なおかつ、業務遂行に直接関連するものだけが事業所得の必要経費になると結論付けました。
これらのことから、領収書があれば全て必要経費になるわけではなく、支出そのものが業務を遂行する上で直接必要であったことの説明が必要になります。
家事上の経費と疑われるものに関しては、事業上の経費であること(=業務遂行上直接必要な経費であること)を説明・証明できる資料を日頃から残しておくことが重要といえます。
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