お知らせ・ブログ
News&Blog
福利厚生費に、社員の所得税が課税されるケースがあることをご存知ですか
2022.08.19
少子高齢化のため労働人口は減少の一途です。
どの企業の経営者とお話ししても、人材採用には苦戦していらっしゃいます。
採用媒体の営業の人に話を聞くと、求人票の「福利厚生」の項目が充実していると、意外と応募者の気持ちが動くのだそうです。
ところが、手厚い福利厚生にしたつもりが、これに所得税が課税され源泉所得税の対象になってしまい、給与手取りが減ってしまう、ということが生じてしまう時があります。なかなか、見落としてしまう項目です。
税務調査の時に調査官が見ている項目の一つですので注意が必要です。
そんな内容をまとめてみましたので、ご参考にしてください。
【1】食事の現物支給
飲食店の学生アルバイトの楽しみの一つは、賄いですね。飲食店でなくても、食事の福利厚生があると、若い方は特にうれしいものです。
ところが、これに所得税が課税されてしまうことがあります。
所得税基本通達36-38の2 抜粋
使用者が役員又は使用人に対し支給した食事につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。
これをわかりやすくすると下記のようになります。
次の2つを満たしていると給与として課税されない
① 役員・使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
② 次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
飲食店でアルバイトから1回の食事で200円ぐらい食事代をバイト代から徴収されることがあるのは、上記の①の半分以上を負担している、というところに合致させるためのものです。
【2】残業食事代
前述の【1】と違って、下記の規定があります。
所得税法基本通達36-24
使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、課税しなくて差し支えない。
前述の【1】と違うのは、『残業他』したものに支給する食事、ということです。
これは、【1】のような計算をする必要がなく、給与課税がありません。
【3】商品などの値引き販売
いわゆる社割という制度ですね。
自社の商品を社員割引で購入することで、自社のファンづくりにもつながります。日本では広く一般的ですが、これも一定割合以上だと、【給与】として課税されてしまうので、注意が必要です。
所得税法基本通達36-23
使用者が役員又は使用人に対し自己の取り扱う商品、製品等(有価証券及び食事を除く。)の値引販売をすることにより供与する経済的利益で、次の要件のいずれにも該当する値引販売により供与するものについては、課税しなくて差し支えない。
- 値引販売に係る価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常他に販売する価額に比し著しく低い価額(通常他に販売する価額のおおむね70%未満)でないこと。
- 値引率が、役員若しくは使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められていること。
- 値引販売をする商品等の数量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること。
細かい規定ですね。
ポイントは下記です。
- 販売価額×70%以上であること。
- 仕入値より低くならないこと。
- 値引き率が「一律」であること。または格差があっても地位や勤続年数のバランスが合理的であること。
- 大量販売でないこと。
この辺りに沿った通常の社員割引であれば、給与として課税されません。
【4】資格試験等の費用負担
社員の技術習得等の費用を会社が負担してあげる、という制度もよくありますが、これは下記の通達の規定があり、これに合致すれば給与として課税されません。
所得税基本通達36-29の2
使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。
ポイントは、「業務の遂行上の必要」「職務に直接必要な技術他」「これらの費用として適正なもの」という内容です。
役員や使用人が希望していても、会社の業務に関係ない勉強は、個人の負担となるので、給与として課税されます。
このほか、まだまだいろいろありますので、続編に続きます。
福利厚生費に、社員の所得税が課税されるケースがあることをご存知ですか(その2)へ
税理士法人レガート 税理士 土田拓己
税理士法人レガートは、中央区銀座より様々な情報発信をしております!
税務・会計に関するご相談は、お気軽にご連絡ください。
詳しくは「税務会計顧問サービス」をご覧ください。