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取引先から破産申立の案内が来たとき
2022.04.18
突然、取引先から「自己破産を申し立てましたので、今後の連絡は弁護士に。」という趣旨の通知が届くことがあります。コロナの影響や価格高騰から今後もこのようなことが増加するのでは、と心配です。
取引状況によりますが、一定の損失が発生することは避けられないでしょう。
【1】まず、すべきこと
(1)状況確認
まずは、状況把握に努めましょう。
未回収の売掛金がいくらなのか、預り金などがあるか。納品予定のものはないか。仕入があれば買掛金がないか。など、債権債務と商品在庫の状況を確認しましょう。
また、相手の状況によっても対応が違います。
事業を継続中なのか、破産の申立予定か申立をしたのか、担当者と連絡がつくかどうか。そして、取引契約書についても再確認しましょう。
(2)弁護士に相談
金額の大きさにもよりますが、回収できる方法がないか、弁護士に相談することも検討します。
取引条件によっては、納品後の商品を取り戻したり、売掛金と買掛金を相殺したり、場合によっては、損害を最小限にすることもできるかもしれません。
【2】貸倒損失の処理をする
通知が来た段階で、売掛金の回収がほとんどできないことが予想されることがありますが、売掛金があるということは、何もしなければ、売上として税金の対象になるものです。
回収見込みがないのに、利益として税金の対象になってしまいます。
これを回避するため、次の破産の手続きの状況により、債権の貸倒処理をして損失計上することができます。
(1)破産手続開始等の申し立ての状態の場合
次の金額を貸倒引当金として、損金にすることができます。
(対象金銭債権-実質的に債権とみられない金額-取り立て等の見込金額)×50%
実質的に債権とみられない金額とは、同一人に対する債権債務のことです。
売掛金がある相手から保証金を預かっている場合や、同じ相手先に売上と仕入をしている場合に、買掛金や預り金の債務が発生していることがあります。
上記の貸倒引当金の計算では、同じ相手先の買掛金や預り金を差し引いた残額を対象にして計算します。
(2)破産手続きの決定の状態の場合
決定の通知があったときには、残っている債権の全額を貸倒損失として損金にすることができます。
実務的には「債権者集会の協議決定」の通知を確認して損金計上します。
(3)取引停止後1年以上経過している場合
最終の取引や弁済の時から1年以上経過しているときは、備忘価額(1円)を差し引いた残額を貸倒損失にすることができます。
これは、貸付金などの一時の債権ではなく、継続的な取引がある場合に限って認められている処理で、破産申立の通知等が来ていなくても使える方法です。
(4)その他
相手先の財務・資金繰りの状態が決算書などにより確認できる場合で、債権の全額が回収できないと明らかになったときは、その時に全額貸倒損失にすることができますが、実務上は破産状況になるような相手先の財務情報などは取得することはできませんので、この方法はほとんど使われることはありません。
また、上記の(2)の「債権者集会」の協議で弁済猶予となった金額については、一部、貸倒引当金の処理をすることができます。
【3】倒産防止共済掛金(経営セーフティ共済)に加入しておく
経営セーフティ共済は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
■独立行政法人 中小企業基盤整備機構 経営セーフティ共済
無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。
掛金月額は、5,000円から20万円までの範囲(5,000 円単位)で自由に選択できます。掛金は掛金総額が800万円に達するまで積み立てることができます。
取引先の倒産リスクに備えるために、この制度も検討しておくとよいでしょう。
加入のメリット
- 無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入れ可能
- 取引先が倒産後、すぐに借入れできる
- 掛金の税制優遇措置が受けられる
- 解約手当金が受けとれる
この経営セーフティ共済は、掛金が損金となり、納付月数が40か月以上になって解約すると掛金総額を受け取ることができるので、利益の繰り延べの節税的な観点で加入する方もいらっしゃいます。
以上、ご参考になれば幸いです。
税理士法人レガート 税理士 土田拓己
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