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親族に対する非常勤役員報酬(法人税調査)
2021.09.22
同族会社においては、代表者の親族を非常勤取締役として役員報酬を支払っているケースは少なくないと思いますが、税務調査ではその役員報酬の額が適正であるかどうかが常に争点となります。
今回は、非常勤役員である代表者の親族(母親)に対する役員報酬の額が不相当に高額であるとして否認指摘された事案をご紹介します(平成17年12月19日裁決)。
事案の概要
- 建築業を営むA社は代表取締役の母親Eを取締役に就任させ、非常勤であるEに対し役員報酬を支給していた。
- A社から支給されたEへの役員報酬は、平成15年1月期に3300万円、平成16年1月期に3600万円であり、その全額を損金として法人税の申告を行っていた。
- 平成16年11月、法人税の税務調査により平成15年1月期に関しては3171万円が、平成16年1月期に関しては3414万円が、それぞれ過大役員報酬であるとして損金不算入とする更正処分を行った。
- A社は税務署の処分を不服として国税不服審判所に審査請求を行った。
まず、税務署側の主張をまとめると次のようになります。
税務署の主張
- Eの職務は主に代表取締役や従業員からの相談を受けることであり、他に取締役として決められた職務はない。
- Eの職務の対価として相当と認められる役員報酬の額は、A社の類似法人として抽出した10社の非常勤取締役の報酬額の平均値が相当であり、その適正報酬額は、平成15年1月期は129万円、平成16年1月期は186万円である。
- 従って、上記金額を超える部分は不相当に高額な部分の金額と認められ、平成15年1月期は3171万円、平成16年1月期は3414万円が損金の額に算入することはできない。
一方、納税者であるA社は次のように主張しました。
納税者の主張
- Eは、会社の設立に際して、資本金額の決定、株主の選定と依頼、取締役及び監査役の選定と依頼、設立における司法書士及び弁護士への依頼並びに従業員の採用等を行いその尽力は大であった。
- 設立後は、代表取締役のよき相談相手として、会社の経営に参画している。
- 従業員からの悩み事を聞いて会社の仕事が円滑に進むようにしてくれたほか、退職した従業員に対する貸付金の集金も行っていた。
- 月額300万円は過大であるとしても、適正報酬額については会社の従業員の給与を参酌して算定することが妥当であり、従業員Fに対して月額50万円の給与を支給していることから、月額50万円が相当である。
- 従って、適正報酬額は平成15年1月期が550万円、平成16年1月期が600万円となる。
両者の主張を聴取し、事実関係を調査した国税不服審判所は、最終的に次のように判断しました。
国税不服審判所の判断
- A社の定款において、取締役及び監査役の報酬は株主総会の決議をもって定めるとされているが、本件各事業年度の取締役及び監査役の報酬に関する株主総会の決議はされていない。
- Eの職務の内容は、代表取締役や従業員の相談相手になることであり、特に決まった仕事はない。
- Eの出社日時及び仕事内容を明らかにする書類は作成されておらず、会社の事務室内にEの机はなく、出社時には空いている机を適当に使用させている。
- A社は調査官に対しEの職務に関する具体的な資料を提出せず、当審判所に対してもFの職務の内容や勤務の状況等を明らかにしていない。
- 会社設立時における役割、貢献度等自体は職務内容の構成要素でないことは明らかであり、また、尽力が大というのもその判断は極めて主観的で、何をもって大というのか甚だ曖昧である。
- よき相談相手というのも客観性・具体性に欠けるものであり、その裏付けとなる確たる証拠資料も提出しておらず、当審判所の調査によっても明らかではない。
- 税務署が抽出した類似法人と適正報酬額については、A社と業種・事業規模が類似し、A社の所在する地域の非常勤取締役が存する法人を類似法人としており、その選定過程と選定法人に合理性に欠ける点はなく、本件適正報酬額とした算出方法についても、それぞれの類似法人の特殊性を捨象するという点で合理性があると認められる。
- 以上のことから、本件各事業年度の適正報酬額を計算すると、平成15年1月期:118万円、平成16年1月期:186万円が役員報酬としての適正額となり、税務署が下した更正処分はいずれも適法である。
いかがでしょうか。
非常勤役員といっても実際の職務内容は千差万別であり、すべてが上記のような結果になる訳ではありませんが、職務内容が明確にできず会社に対する貢献等も具体的に説明できない場合には、上記の金額が非常勤役員の報酬額としての目安になるのではないかと思われます。
今後の参考になれば幸いです。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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