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不動産鑑定評価額での申告を否認(相続税調査)

2021.05.19

相続税法第22条(評価の原則)では、相続等により取得した財産の価額は、その財産の相続時における「時価」によるものと規定しています。
しかし、不動産に関しては、その「時価」を算定することが困難であることから、財産評価基本通達において一定のルール(評価方法)を定めています。
今回は相続で取得した「土地家屋」の時価について争われた事案をご紹介します(平成31年2月20日裁決)。

事案の概要

  • 被相続人Aは平成27年12月〇日に死亡し、Aの妻と子らがAの遺産を相続で取得した。
  • Aの遺産には昭和45年に建築された鉄骨・鉄筋コンクリート造り(地下1階地上8階建)の家屋があり、その家屋の利用状況等は次の通りであった。
  • 地下1階と1階部分は、相続開始日において貸店舗として利用されていた。
  • 2階ないし4階部分は、平成18年まで●●として利用されていたが、その後は相続開始日まで何らの利用もされていなかった。
  • 5階部分は、昭和60年頃までK教室として利用されていたが、その後は相続開始日まで何らの利用もされていなかった。
  • 6階部分は、相続開始日において、被相続人Aと妻の居宅として利用されていた。
  • 7階及び8階部分は、相続開始日において電気設備等の機械室であった。
  • 上記家屋の敷地は、路線価地域に所在しており、評価通達に定める路線価方式で計算した場合の更地価額は8565万円ほどの土地であった。
  • Aの相続人は、本件相続税の申告において、不動産の価額は、M不動産鑑定士が作成した鑑定評価書に基づく鑑定評価額として、次のような価額で申告を行った。
  • 本件家屋は解体除去を前提とし、その価額を考慮しない。
  • 本件土地の価額は、更地価額8565万円から本件家屋の解体除去費用7000万円を差し引いた1565万円。
  • その後、税務調査が行われ、相続で取得した土地・家屋は財産評価基本通達に基づく評価額によることが相当であるとして、税務署は相続税の更正処分を行った。
  • Aの相続人は税務署の評価額は時価を上回る違法なものであるとして、国税不服審判所に審査請求を行った。

まず、税務署側の主張をまとめると次のようになります。

税務署の主張

  • 『家屋』の価額は、評価通達において、その家屋の固定資産税評価額を基礎として計算するものと定められている。
  • 本件家屋の固定資産税評価額は、固定資産評価基準の定めに基づき、再建築費評点数を基準として、これに家屋の損耗の状況による補正等を行って適正に算定されており、本件家屋の価額の算定過程に不合理な点は認められない。
  • 本件家屋は、相続開始日において、その一部が貸店舗や被相続人等の居宅として利用されており、耐用年数も未経過であることに加え、調査担当職員が行った本件家屋の現地確認によっても建物内外において著しく老朽化又は損耗している事実は認められない。
    従って、本件家屋を解体除去することを前提とする鑑定評価書に合理性はない。
  • 『土地』については、本件家屋が上述の通り、相続開始日において貸店舗や被相続人等の居宅として利用され、相応の価額を有していた状況にあり、本件家屋を解体除去することを前提に、その費用を本件土地の価額に反映させるべき事情は見当たらない。
  • 従って、鑑定評価書に合理性はないから、本件土地の価額は、評価通達の定めに従って評価した価額によるべきである。

一方、納税者は次のように主張しました。

納税者の主張

  • 『家屋』の固定資産税評価額は、本件家屋の未償却残高と大きな乖離があり、平成6年度から相続開始日まで据え置かれ、その間の減価が全く反映されておらず、一般常識からかけ離れた評価がされている。
  • 本件家屋は、2階から4階までが●●という特殊な構造で、再利用が困難な建物であり、本件家屋に使用されているアスベストの除去並びに●●で使用していた有害物質(PCB)を含んだ大型電気機器の撤去及び処理が必要となる。
  • また、本件家屋は、2階より上階は居宅として利用せざるを得ない状況であるため、修繕や小型の電気機器を撤去しながら経済性を考慮しないで使用しているのが現状であり、経済的な観点から再利用価値があるとはいえない。
    従って、本件家屋を解体除去することを前提とする鑑定評価書に合理性はある。
  • 『土地』については、本件家屋が上述の通り、特殊な用途の建物であることや法的に処理しなければならない有害物質を含んだ再利用価値のない建物であり、本件不動産の価格形成の際の阻害要因にしかならないことから、本件家屋の解体除去費用が本件土地の価額に食い込むことも十分あり得る。
  • また、鑑定評価額が家屋を解体除去することを前提とするものであっても、本件鑑定評価書の評価手法に誤りはない。
    従って、本件鑑定評価書に合理性はあり、土地の価額は、鑑定評価書に基づき更地価格から家屋の解体除去費用を差し引いた額とすべきである。

両者の主張を聴取し、固定資産税評価額の算定方法まで詳細に調査した国税不服審判所は、最終的に次のように判断しました。

国税不服審判所の判断

  • 本件鑑定評価書においては、本件不動産の最有効使用の判定に当たって、本件家屋は大改修を行っても収益性回復は困難であり、機能的、経済的観点から市場性が全く認められないため、解体除去が必要であると判断している。
  • しかしながら、本件家屋の地下1階及び1階部分は貸店舗として、本件家屋の6階部分は被相続人等の居宅として利用されていたことからすると、相続開始日において、本件家屋の●●以外の部分の多くが現に利用されていたことは明らかであり、本件家屋のうち少なくとも賃貸用及び居住用に供されている部分については、相応の経済価値があったと認められる。
  • そうすると、本件鑑定評価書においては、本件不動産の最有効使用のためには家屋の解体除去が必要であると判断しているが、現実の本件家屋の用途を継続する場合の経済価値と本件家屋を解体除去した場合の解体除去費用等を勘案した経済価値との十分な比較考量がされているとは認め難く、本件不動産の最有効使用の結論に至った具体的根拠も示されていない。
  • 従って、鑑定評価書における本件不動産の最有効使用の判定は合理性を有するものとは認められないから、本件不動産の最有効使用のためには本件家屋の解体除去が必要であると判断した鑑定評価書に合理性があるとは認め難い。
  • 鑑定評価書においては、土地の更地価格から家屋の解体除去費用を控除して鑑定評価額を決定している。しかしながら、上述の通り、本件不動産の最有効使用のためには本件家屋の解体除去が必要であると判断した本件鑑定評価書に合理性があるとは認めるに足りない。
  • 従って、土地の更地価格から家屋の解体除去費用を控除した本件鑑定評価額は、本件不動産の時価を適正に評価したものであるとは認め難い。

結論として国税不服審判所は、評価通達の定めに従って評価した価額が、相続税法第22条に規定する「時価」として相当なものであると判断しました。

相続税の実務においては、不動産鑑定士による鑑定評価額を時価として申告するケースもありますが、鑑定評価額がすべて是認されるわけではありません。
様々な観点からその不動産の経済的価値を検討し評価することが必要といえます。

今後の参考になれば幸いです。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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