相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
配偶者居住権の創設による相続税計算への影響 ~その1~
2020.02.05
民法(相続編)の改正によって「配偶者居住権」というものが2020年(令和2年)4月1日から施行されます。
この配偶者居住権とはどのような内容で、相続税の計算にどのような影響があるのでしょうか。
配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、配偶者が相続開始時点で被相続人の所有する建物(自宅)に居住していた場合、その自宅を配偶者が相続しなくても、終身または一定期間、その建物に無償で居住できる権利のことです。
つまり、被相続人が所有していた建物(所有権)を、「配偶者が住む権利(配偶者居住権)」と、「配偶者以外の相続人が取得する権利(負担付き所有権)」に分け、別々に相続することができるようになりました。
このように配偶者居住権は、相続後も配偶者が自宅に住み続けられる権利なのですが、配偶者だけに認められた特別な権利のため、第三者に売却したり賃貸したりすることは認められていません。そのため、配偶者居住権の相続税評価額は、単独の所有権に比べて低く抑えられます。
なお、配偶者居住権は2020年(令和2年)4月1日以降に開始する相続から適用され、2020年4月1日以降に作成する遺言書で記載できるようになります。
相続時における配偶者居住権の具体例
次に、配偶者居住権の具体例についてご紹介します。
相続人が妻と子1人で、遺産が自宅3,000万円と預貯金3,000万円だった場合。法定割合で分割すると妻1/2・子1/2のため、妻3,000万円・子3,000万円となります。そのため従来は、妻が自宅を相続するとそれだけで1/2の3,000万円に達してしまい、預貯金を取得することはできませんでした。
しかし、配偶者居住権が創設されることによって次のような分割が可能になります。
便宜上、配偶者居住権の価額を1,500万円、配偶者居住権が設定された所有権(負担付き所有権)を1,500万円と仮定して計算すると、妻は配偶者居住権1,500万円を相続しつつ、法定割合1/2の3,000万円に達するまでの1,500万円の預貯金も相続できるようになります。つまり、自宅に住み続けながら預貯金も相続できるようになるわけです。
一方、子についても、配偶者居住権が設定された所有権1,500万円と預貯金1,500万円を相続できるようになります。
配偶者居住権の評価と計算式について
配偶者居住権は、配偶者が建物を利用するための権利です。ただ、建物は土地(敷地)とともに利用することになるため、土地の利用権も同時に評価する必要があります。
具体的には、配偶者がその建物に何年くらい住めるかを数値で表した指標(建物の残存耐用年数、配偶者の平均余命など)をもとに評価しつつ、さらに金利を考慮して将来の価値を現在の価値に引き直したうえで、配偶者居住権の価額を計算します。
それぞれの計算式は次のようになります。
建物
①配偶者居住権
②建物の所有権
土地
①土地の利用権
②土地の所有権
詳細な試算は税理士にご相談を
今回の民法改正によって創設される配偶者居住権は、相続および相続税の計算に大きく影響します。試算する際には、ぜひ専門家である税理士にご相談ください。
また、計算式を見ただけではなかなか理解しにくいかと思いますので、評価の考え方とともに、具体的な金額を入れた事例を 次回 解説いたします。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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