相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
相続税の節税を想定した贈与の取り扱いについて
2019.10.09
病気で余命いくばくもない父親が、相続財産を減らすために、子どもや孫たちに現金を贈与すると言い出しました。今から贈与をして、本当に相続税の節税になるのでしょうか。
1.贈与財産の加算の規定
相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときは、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を“加算”して、相続税を計算しなければなりません。
これは、駆け込み的な生前贈与による行き過ぎた節税対策を防止するために設けられた制度です。
ただし、加算の対象となる財産の贈与に関して納めた贈与税がある場合には、加算された人の相続税の計算上、控除されます。従って、贈与による相続税の節税メリットは享受できませんが、税金が二重にかかることはありません。
2.加算する贈与財産の範囲
加算の対象となる財産は、被相続人から生前に贈与された財産のうち、相続開始前3年以内に贈与されたものです。3年以内であれば、贈与税がかかっていたかどうかに関係なく、加算の対象になります。
従って、暦年贈与の基礎控除額110万円以下の贈与財産で贈与税の申告が必要なかったものでも、相続財産に加算されます。また、被相続人が死亡した年に被相続人から贈与された財産は贈与税が非課税となりますが、その財産についても加算の対象です。
3.加算しない贈与財産の範囲
被相続人から相続開始前3年以内に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。
(1) 婚姻期間20年以上の夫婦間で適用できる「贈与税の配偶者控除」の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額。
(2) 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、「住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税措置」の適用を受けた金額。
(3) 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の適用を受けた金額。ただし、次の場合に限る。
- ①贈与者死亡時において受贈者が23歳未満の場合
- ②贈与者死亡時において受贈者が学校等に在学している場合
- ③贈与者死亡時において受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
(4) 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の適用を受け、且つ、相続開始日までに結婚・子育てのために支出した金額。
4.加算の対象にならない受贈者
前述のとおり、この制度は駆け込み的な生前贈与による行き過ぎた節税対策を防止するために設けられています。そのため「3年以内の生前贈与加算」の対象となるのは、「相続時に相続や遺贈で財産を取得した人」に限られます。
つまり、生前に財産を贈与された人が相続人である「子」で、その後の相続においても遺産を相続する場合には、その「子」は「3年以内の生前贈与加算」の対象になります。
一方、生前に贈与された人が「孫」や「子の配偶者」で、その後の相続において遺産を相続や遺贈で取得しない場合には、その「孫」や「子の配偶者」は「3年以内の生前贈与加算」の対象にはなりません。贈与時の贈与税で納税が完結し、相続税には影響しないためです。
これらの規定を踏まえて、ご質問のケースを考えてみましょう。
まず、相続で財産を取得するお子さんへの贈与は、贈与後3年以内に相続が開始してしまうと、節税効果は得られません。
しかし、相続で財産を取得しないお孫さんへの贈与であれば、贈与した時点でお父様の財産が減少し、3年以内の加算の対象にもならないため、相続税の節税効果が生じます。
以上のことから、相続と贈与のルールを加味しつつ、節税につながるかどうか判断してみてください。
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