相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
内縁の妻に財産を残したい場合
2024.08.29
現在の日本の民法では婚姻届を出していない内縁関係のパートナーには相続権がないため、財産を相続させることができません。では、内縁の妻や夫に財産を渡したい場合にはどうすればよいでしょうか。
今回は内縁の妻や夫に財産を残す方法について解説したいと思います。
内縁関係(事実婚)と相続権
内縁の妻や夫とは、お互いに婚姻の意思があり事実上の夫婦関係にはあるものの、正式な婚姻届は提出していない夫婦をいいます。現在の民法では「被相続人の配偶者は常に相続人となる」(民法890条)と定めていますが、民法上の配偶者は婚姻の届出をした者に限られ、いわゆる内縁関係にある者はこれに該当しないとされています。
そのため、事実上の夫婦関係はあったとしても、婚姻の届出をしていない内縁の妻や夫は相続人にはなれず、遺産を相続で取得することはできないこととなっています。
内縁の妻や夫に遺産を渡すには
法定相続人になれる人は、被相続人の配偶者と被相続人の血族です。血族の相続人には順序が定められていますが、配偶者は常に相続人になります。しかし、前述の通り内縁の妻や夫は民法上の配偶者ではないため、相手方の相続人にはなれません。
このような場合、内縁の妻や夫に自分の財産を残すためには、法的に有効な遺言書を作成するか、生前に死因贈与の契約を締結しておく必要があります。
例えば、「内縁の妻〇〇に□□(預金や不動産などの財産)を遺贈する」と記した遺言書を作成する、あるいは、「私が死亡したら□□を〇〇に贈与する」といった内容の贈与契約書を作成しておくことで、その思いを実現させることができます。
ただし、当人に離婚や死別した配偶者との間の子がいる場合や、当人の親が健在の場合には、遺言や死因贈与契約を行っても遺留分の問題は残りますので、相続人の状況をよく見極めて対応することが必要となります。
遺言等で遺産を取得した場合の税金
内縁関係の相手から遺言等で遺産を取得した場合には、その遺産に対しては相続税が課されます。しかし、戸籍上の配偶者ではないため、相続税を計算するうえで注意する点がいくつかあります。
(1)配偶者の税額軽減特例が受けられない
配偶者の税額軽減特例とは、配偶者が相続で取得した財産のうち、配偶者の法定相続分または1億6千万円のいずれか大きい額までは相続税がかからないという制度です。
被相続人の財産形成の貢献度や相続後の配偶者の生活保障を考慮して設けられている特例ですが、この制度は民法上の配偶者、つまり婚姻届のある配偶者に限られており、内縁関係の配偶者は税額軽減の特例を受けることはできません。そのため、遺言等で内縁の妻や夫に遺産を渡すことはできたとしても、遺産のすべてが相続税の課税対象になってしまいます。
(2)生命保険金等の非課税制度が受けられない
相続人が受け取る死亡保険金や死亡退職金については、「500万円×法定相続人の数」の金額まで相続税が非課税となる取り扱いがあります。この非課税制度が適用できるのは相続人が受け取る死亡保険金や死亡退職金であり、内縁関係の配偶者が受け取る保険金や退職金には適用できないものとなっています。
(3)小規模宅地の減額特例が適用できない
被相続人の居住用の宅地や事業用の宅地については、相続人の生活基盤を保護する目的から一定面積まで相続税の課税価格を減額する特例があります。この特例が適用できるのは、被相続人の親族が相続等で取得した場合に限られており、内縁関係の配偶者は適用することはできないものとなっています。
(4)相続税額が2割加算される
配偶者及び一親等血族以外の人が相続や遺贈で財産を取得した場合の相続税は、本来の相続税額の2割増しになるという規定があります。内縁関係の配偶者は残念ながらこの規定にも該当するため、納付する相続税額が2割加算されることになります。
いかがでしょうか。
内縁関係の配偶者は事実上の夫婦関係にあったとしても、相続の際には相続権がないため、遺産を渡したい場合には事前に必要な対策を講じておく必要があります。
また、仮に遺産を渡せるように手を打ったとしても、税法上(相続税の計算上)は戸籍上の配偶者に比べて非常に不利な立場にあるといえます。
今後の参考になれば幸いです。
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