相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
遺産を法人に遺贈した場合
2024.04.11
会社のオーナー経営者が自分の財産を会社に遺贈した場合にはどのような税金が生じるでしょうか。
今回は事例を使って解説したいと思います。
事例
私は自分の会社(同族の株式会社)に駐車場用地を賃貸していますが、遺言でこの駐車場用地を会社に遺贈したいと思っています。
妻とは死別し子供もいないため、私の法定相続人は甥と姪の2人だけ、財産は預金が4,000万円とこの駐車場用地(相続税評価額8,000万円、時価1億円)のみです。
会社と甥・姪にはどのように税金が生じるのでしょうか。
同族会社の課税関係
相続税の納税義務者は、相続税法第1条の3第1項において「個人」と定められており、一般の「法人」は原則として相続税の納税義務者には該当しません。法人に遺贈された財産は、相続税の課税対象にはならず、法人の受贈益(益金)として処理されることになります。
ただし、相続税の租税回避を防止する目的から、「人格のない社団や財団」や、相続税の負担が不当に減少することとなるような「持分の定めのない法人」への遺贈については、これらを個人とみなして相続税を課税することとなっています。
事例のケースでは、同族会社は一般の普通法人であることから、相続開始時の駐車場用地の時価が同族法人のその事業年度の益金となり、法人税・法人事業税・法人住民税が課税されることになります(法人税法22条2項)。
仮に、相続開始時の同族会社の決算が赤字であったり、繰越欠損金がある場合には、それらの金額は遺贈される財産の益金と相殺することができるため、法人税等の負担は軽減されることが考えられます。
また、通常の相続で不動産を取得した場合には、土地・家屋にかかる不動産取得税は非課税となりますが、法定相続人以外への不動産の遺贈は課税対象となるため、同族会社には不動産取得税が課されることになります。
甥・姪の課税関係
相続財産が預金4,000万円と駐車場用地(相続税評価額8,000万円、時価1億円)、法定相続人が2人、遺言で「甥と姪には預金2,000万円ずつ、同族会社には駐車場用地を遺贈する」とあった場合には、前述のとおり、相続税の課税対象となるのは「個人」に遺贈する預金4,000万円のみとなります。
法定相続人が2人の場合の相続税の基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)となり、相続税の課税対象額(4,000万円)が基礎控除額(4,200万円)を下回るため、相続税は発生せず、相続税の申告は必要ないこととなります。
その他の課税関係
(1)遺贈した人の課税関係
個人が、土地や家屋などの譲渡所得の基因となる資産を法人に遺贈した場合には、遺贈の効力が発生したとき(相続開始時)の時価で譲渡があったものとみなされて、その資産の取得時からの値上がり益に対して所得税が課税されることとなります(所得税法59条1項1号)。
しかし、遺贈した本人は死亡しているため、所得税を申告納税することができません。
この所得税については、遺贈した人の相続人が本人に代わって準確定申告を行い、納税する必要があります(所得税法124条)。この所得税は、本来は遺贈した本人が納める税金ですので、相続税の計算において債務として控除することができます。
(2)同族会社の株主の課税関係
同族会社に対して財産を遺贈することによって、同族会社としては資産が増加し自社株の価値が高まることが考えられます。自社株の価値が高まるということは、その株主にとって資産価値が高まることに繋がります。
つまり、財産を法人に遺贈した人は、他の株主に対しても株価の上昇に見合う財産を遺贈したものといえます。
そこで、法人に対する遺贈によってその法人の株価が上昇する場合には、他の株主についても自社株評価額の上昇分について、間接的に遺贈を受けたものとして相続税が課されることになります(相続税法9条、相続税法基本通達9-2)。
この点は盲点となりやすい問題ですので、十分に注意する必要があります。
以上、今後のご参考になれば幸いです。
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