相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
養子縁組と相続税
2022.12.08
相続税の節税対策の一つに、孫や子どもの配偶者などを養子にする方法がありますが、今回は養子縁組と相続税の関係と、養子に関しての注意点をお伝えいたしたいと思います。
養子と相続税の関係
結論から申し上げますと、養子縁組すると相続税は確かに減ります。
民法第727条(縁組による親族関係の発生)には次のように記載されております。
「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」
つまり、養子縁組をした日から養子は実子と同じ立場になるため、縁組をした人にとっては子供が一人増えることになり、相続税の計算にも大きく影響することになります。それは、現在の相続税が法定相続人の数を基礎として計算する仕組みになっていることに原因があります。
具体的には次の4項目に影響を及ぼします。
①相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)
②生命保険金の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)
③死亡退職金の非課税限度額:(500万円×法定相続人の数)
④相続税の総額の計算(相続人が増えることで一人当たりの累進税率が薄まる)
上記の①~③は法定相続人が増えることにより控除額や非課税額が大きくなり、④は相続人が増えることで相続税の総額を計算する際の超過累進税率が緩和されることになります。その結果、相続税が減少することになります(但し、孫養子の場合には養子の相続税が2割増しとなりますのでご注意ください。)。
それであれば、養子縁組をすればするほど相続税が少なくなるかというと、残念ながらそうはいきません。民法上の養子縁組には人数の制限はありませんが、相続税法では法定相続人としてカウントする人数に制限を設けています。
養子と法定相続人の関係
養子縁組は民法上何人でも可能です。人数に制限はありません。
しかし、相続税法上は養子縁組を利用した租税回避行為を防止するため、法定相続人の数に含める人数には一定数の制限を設けています。
- 被相続人に実子がいる場合・・1人まで
- 被相続人に実子がいない場合・・2人まで
例えば、配偶者がなく実子が2人いる人が、2人の人と養子縁組をしていた場合、相続税を計算する際の法定相続人の数は、実子2人と養子のうちの1人の、計3人という数になります。養子のうち誰が法定相続人になるかという問題ではなく、人数を数える上での取り扱いとなります。
ただし、養子縁組が相続税の負担を減少させることのみを目的として行われた場合には、上記の養子の数に含めることはできないとされていますので注意が必要です。
相続税法の人数制限に該当しない養子縁組
前述の通り、民法上は何人でも養子にすることができますが、相続税法では法定相続人の数に含める人数に制限を設けております。
しかし、次のいずれかに該当する人は、実の子供として取り扱われますので、すべて法定相続人の数に含まれます。
- 被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人
- 被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人
- 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人
- 被相続人の実の子供、養子又は直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子供などに代わって相続人となった直系卑属。
以上のように養子縁組は相続税の計算上は節税効果のメリットがありますが、養子になる人にとっては非常にデリケートな問題です。未成年者を養子にする場合には親権の問題にも影響しますので、慎重に検討いただく必要があると思います。
以上、ご参考になれば幸いです。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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