相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
申告期限までに分割できない場合
2022.10.07
相続税の申告期限
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署に行うことになっています。相続税の申告は、相続財産が分割されていない場合であっても上記の期限までにしなければなりません。分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありませんので留意が必要です。
相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人等が民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告納税することになります。
遺産分割と各種特例の関連性
(1)小規模宅地等の課税価格の減額特例
相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人等の「事業の用」に供されていた宅地等や、「居住の用」に供されていた宅地等については、相続税の課税価格の計算上、一定の割合を減額することができるという特例です。
例えば、事業用の宅地等の場合には400㎡まで80%減額、居住用の宅地等の場合には330㎡まで80%の減額、貸付用の宅地等の場合には200㎡まで50%減額、といったように相続税の節税に大きな影響を与える特例になります。
但し、この特例を受けるためには、相続人等の間で誰が特例対象地を取得するか、決定していることが条件となります。そのため、相続財産の分割協議が成立していない場合には、この特例を適用することはできないこととなります。
(2)配偶者の税額軽減特例
被相続人の配偶者が相続や遺贈により財産を取得した場合には、次の金額のどちらか多い金額まではその配偶者に対して相続税がかからないという特例です。
- 1億6000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
この配偶者の税額軽減の特例も、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっているため、相続財産の分割協議が成立していない場合にはこの特例を適用することができないこととなります。
従って、相続財産の分割協議がまとまらない状態で申告期限を迎えてしまった場合には、上記の二つの特例が適用できないため、特例を使わないところの高い相続税を期限内に納めなければならなくなります。
遺産分割が決まらない場合の手続き
以上の通り、申告期限までに遺産分割の協議が整わない場合には、小規模宅地等の減額特例や配偶者の税額軽減の特例が使えないため、相続税額も高額になるわけですが、この二つの特例に関しては申告期限から3年以内に分割が確定した場合には適用できるという例外規定が設けられています。
但し、申告期限後3年以内に分割が確定しこれらの適用を受ける場合には、期限内に提出する相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しておくことが必要になります。
この見込書を申告期限までに提出し、その後実際に3年以内に分割が確定した場合には、特例を適用して相続税を計算し直し、納め過ぎとなった相続税を還付してもらうことが可能となります。
期限内に分割を決めて申告するのが本来の姿ではありますが、相続人の事情で分割の決定が遅れる場合には、実務的には次のような流れになります。
- 特例を使わないところで先ずは期限内申告を行う。
- 申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する。
- 申告期限から3年以内に分割を決定する。
- 分割が決定したら、決定した日から4ヶ月以内に更正の請求書を提出する。
以上の4点は一つも外すことはできませんので十分ご注意ください。
以上、ご参考になれば幸いです。
相続手続きでお困りの方は、お気軽にご相談ください
相続専門の税理士法人レガートでは、相続税のプロである税理士が節税を意識しながら、相続税に関わる問題解決に向けて、しっかりとご支援いたしております。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
相続専門の税理士法人レガートは、東京都中央区銀座より、相続・贈与にまつわるさまざまな情報発信をしております!
相続・贈与に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
詳しくは「相続専門サイト」をご覧ください。
- 初回無料面談のお申し込み
- お電話でのお問い合わせ
0120-955-769 - お電話でのお問い合わせ