相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
初めてでも安心!相続手続きのポイント(4)
2022.01.20
前回の記事、【初めてでも安心!相続手続きのポイント(3)】では、相続財産の特定についてご紹介いたしました。
今回は、3つの相続方法と、そのうちの1つ「相続放棄」を中心に解説いたします。
3つの相続方法とポイント
相続人を確定し、故人の相続財産を確定する段階で、「ひょっとしたらマイナスの財産のほうが多いのかもしれない。借金を背負わないといけないかも?」などと、ふと不安がよぎることもあるでしょう。
実は、相続には3つの方法があります。「単純承認」と「限定承認」、そして「相続放棄」です。
それぞれ、どんな特徴があるのか見てみましょう。
単純承認とは
相続人が全員の意思で納得して、債務などのマイナスの財産も含めたすべての財産を相続します。限定承認や相続放棄をしない場合は、自動的にこの単純承認を選択したことになります。
限定承認とは
マイナスの財産が多い場合、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続します。
どうしても手放したくない相続財産がある場合などに有効です。
例えば、2,000万円の負債(マイナスの財産)があるが、500万円の実家(プラスの財産)は手放したくない場合、限定承認とすることで500万円の範囲で借金を返済すれば良いということになります。
相続放棄とは
プラスの財産・マイナスの財産とも、すべて相続しないという方法です。
マイナスの財産が多く、残したい財産などもない場合に有効です。
限定承認と相続放棄の違い
上記の通り、限定承認と相続放棄は、それぞれマイナスの財産が多い場合に有効ですが、相続手続き方法や条件が異なります。
具体的にどんな違いがあるのか、ご紹介いたします。
限定承認は相続人全員の承認が必要
相続の限定承認は、相続人が一人しかいない場合を除いて、相続人個人の意思だけでは申請できません。相続人全員の意思を確認し、全員でまとまって行うことになります。
したがって、相続人同士の関係が悪い場合や、疎遠な場合は利用が難しくなります。
限定承認の手続きは、相続が開始したことを知った日から3か月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申請をします。申請の際には、限定承認の申述書のほか、故人の出生から死亡時までのすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などが必要です。
相続の限定承認の申述(裁判所HP)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html
また、限定承認の申請後には、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産の清算手続きを行わなければなりません。複雑な手続きが多いため完了までに時間がかかり、相続人全員の承認が必要であることなどから、他の相続方法に比べてあまり選択されていないのが現状です。
相続放棄は個人での申請が可能
一方、相続放棄は、相続人全員ではなく、個人の意思により申請ができます。
相続放棄の手続きは限定承認と同様に、相続が開始したことを知った日から3か月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出します。
申述書が受理されれば、その後の手続きはありません。
なお、相続放棄の「相続の開始したことを知った日」というのは「故人の亡くなった日」と考えるのが一般的ですが、「死亡の通知を受けた日」や「相続について先順位者の相続放棄を知った日」ということも考えられます。
つまり、「いつ、相続が始まったことを知ったのか」については「相続人によって意見の分かれる場合もあり得る」という理解はしておきたいものです。
そして、この「3か月」については初日を含めないで計算します。
例えば、故人が亡くなったことを1月15日の死亡日当日に知った場合は、翌日の1月16日から計算して3か月後である日(4月15日)が相続放棄の期限となります。この期間を過ぎると単純承認したことになるので、期限の判定には注意が必要です。
相続の放棄の申述(裁判所HP)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
相続放棄のメリット・デメリット
相続放棄の最大のメリットは、故人が残した債務を引き受けなくてよいということでしょう。
その他にも、相続人同士で連絡をとったり話し合いに応じたりという煩わしさから解放される点や、遺産分割の際に相続人同士で揉めるようなケースでも、相続放棄をしていれば遺産分割の協議に参加する必要がなく、トラブルに巻き込まれることがないという点が挙げられます。
一方のデメリットとしては、万一、多額の遺産があったとしても相続する権利は一切なくなってしまう点にあります。
相続放棄が承認されてしまうと、その後に遺産の存在が分かっても撤回することはできません。また、自分の相続権利を自分の子供に譲りたいと思っても、放棄の場合にはそれもできません。
相続放棄は、慎重に検討して判断することが大切
所定の手続きを経て相続放棄が認められれば、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送られ、その通知書により、相続放棄した相続人は、その故人の相続に関しては一切の権利・義務がなくなります。
マイナスの財産が多い場合にはメリットの多い方法となりますが、3か月というとても短い期間で意思決定しなければならず、一度相続放棄が承認されると後で撤回することができない制度となっています。
また、相続放棄は単独でもできるため、自分が放棄することによって他の相続人が故人の債務を負担しなければならなくなるという事態にもなります。
事前に相続の専門家に相談し、相続放棄のメリット・デメリットをよく理解したうえで、他の相続人と相談できる関係であれば、協議しながら慎重に判断することが大切となります。
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