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相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」

教育資金一括贈与の非課税措置の延長について

2021.03.05

実施するなら3月末までに!

子や孫へ教育資金を一括贈与した場合の非課税措置が2年間延長される見通しですが、一方で、相続税が課税されるケースも増加するといった改正も加わりますので、今回はこの制度の改正内容と注意点についてお知らせしたいと思います。

1.教育資金一括贈与の非課税措置の概要

教育資金一括贈与の非課税措置とは、高齢者が保有し滞留している多額の預貯金を、子育てで大変な若い世代に還流し消費に回してもらうことを目的として、平成25年度に創設された贈与税の非課税の制度です。

具体的には、30歳未満の者が直系尊属から教育資金に充当するための金銭等の贈与を受けた場合に、受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の者に支払われる金額は500万円)を上限として贈与税が非課税になるというものです。そして、非課税となるためには次の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 贈与者の要件:直系尊属であること。
  2. 受贈者の要件:贈与契約締結日において30歳未満で前年の所得が1,000万円以下であること。
  3. 教育資金の要件:学校等に直接支払われる入学金、授業料その他の金銭で一定のもの、又は学校等以外の塾や各種スクールの月謝等(詳細は文部科学省のホームページを参照)。
    教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置(文部科学省)
  4. 贈与の方法:教育資金管理契約に基づき銀行等の国内の営業所等に預入する方法など。
  5. 申告手続き:受贈者が金融機関等を通して「教育資金非課税申告書」を税務署長に提出すること。

2.贈与者が死亡した場合の現行法の取扱い

贈与者が、教育資金を贈与してから3年以内に死亡した場合には、死亡日時点の教育資金口座の残高は受贈者が相続又は遺贈によって取得した財産となり、原則として相続税の課税対象になります。

ただし、受贈者が23歳未満であったり、23歳以上でも学校に在籍していたり教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合は、相続税の課税対象にはならないとされています。

従って、相続税対策を目的としてこの非課税特例を活用する場合、特に受贈者が19歳を超えている場合には、贈与者が贈与してから3年以上健康でいて頂くことが一つのポイントとなります。

なお、贈与者が健在でも、受贈者が30歳の誕生日までに贈与された教育資金を使いきれなかった場合には、その残金を受贈者がその年に贈与で取得したものとみなされ、贈与税が課されますのでこの点も注意が必要です。

3.条件を厳しくして非課税措置を2年延長

この教育資金一括贈与の非課税措置は令和3年3月31日までの取扱いとなっていますが、新型コロナウイルスの影響で所得環境が厳しくなっている若い子育て世代の支援策として、適用期限を2年延長することが予定されています(令和3年3月末までに国会で成立の見通し)。

ただし、富裕層の相続税の節税目的として利用されないよう適用条件が厳しくなります
例えば、現行法では、贈与者が死亡しても贈与から3年以上経過していれば、教育資金の残高には相続税がかかりませんでしたが、延長される新たな特例では、贈与者が23歳未満や在学中である場合などを除き、贈与日からの年数に関わらず教育資金口座の残高は受贈者が相続又は遺贈によって取得した財産とみなして、相続税の課税対象になる予定です。

そして、受贈者が贈与者の孫や曾孫など、子以外の直系卑属の場合には、相続税額が2割増しとなる点も改正事項となります。
これらの改正は、令和3年4月1日以降の贈与から適用される予定です。

つまり、令和3年4月1日以降の贈与からは税務上の取り扱いが変更される(厳しくなる)ため、この非課税措置の活用をお考えの場合には、制度の内容をよく理解した上で令和3年3月中に現行法の非課税措置を適用して贈与された方が望ましいといえます。

以上、ご参考になれば幸いです。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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