相続専門税理士 服部 誠 の「相続情報マガジン」
相続税の節税にも?「配偶者居住権」の活用策
2020.09.30
今年の4月から施行された「配偶者居住権」。
この「配偶者居住権」を取得(相続)した配偶者が将来死亡した場合、権利が消滅するため二次相続の対象にならず、相続税の節税になる場合があります。
今回は、相続税の節税に繋がる「配偶者居住権」の活用策をご紹介いたします。
なお、「配偶者居住権」については過去にも取り上げておりますので、下記の記事も併せてご覧ください。
配偶者居住権の創設による相続税計算への影響 ~その1~
配偶者居住権の創設による相続税計算への影響 ~その2~
配偶者居住権の種類と特徴
令和2年4月1日より施行された「配偶者居住権」には、二つの種類があります。
(1) 最短でも6か月間の居住を保障する「配偶者短期居住権」
(2) 終身又は一定期間の居住を保障する「配偶者居住権」
後者(2)の「配偶者居住権」は、被相続人が所有していた自宅(所有権)を、配偶者が住む権利(配偶者居住権)と配偶者以外の相続人が取得する権利(負担付き所有権)に分けて、別々に相続することができるようにしたものです。
この「配偶者居住権」を取得した場合には、相続後に譲渡したり、所有者に無断で第三者に賃貸することができないため、配偶者が自宅の所有権を取得する場合に比べて、低い評価額で居住権を確保することができます。
そして最大の特徴は、配偶者が死亡した場合(二次相続時)、配偶者居住権は消滅することにあります。そのため、配偶者居住権は二次相続において相続税の課税財産にはならないことになります。
配偶者居住権の相続税の節税効果
以下の前提条件を基に、配偶者居住権を設定した場合の相続税の節税効果を検証してみましょう。
前提条件
被相続人 | 父(令和2年7月相続開始) |
---|---|
相続人 | 母(75歳)、長男(自己の持ち家に居住、父母とは生計別) |
相続財産 | (1)自宅土地:路線価評価額6000万円(200㎡) (2)自宅家屋:固定資産評価額800万円(木造、築年数10年) (3)その他の財産:1億円 |
遺産分割 | ケース(1) 配偶者居住権(終身利用)を母が、土地家屋の負担付所有権を長男が取得し、その他の財産は長男と1/2ずつ相続 ケース(2) 自宅の土地家屋を母が取得し、その他の財産は長男と1/2ずつ相続 |
母固有の 所有財産 |
5000万円 |
財産評価額の計算
※計算方法は「配偶者居住権の創設による相続税計算への影響 ~その2~」を参照)
-
家屋の配偶者居住権
800万円-800万円×(23年-15年)/23年×0.642≒621万円
-
土地の利用権
6000万円-6000万円×0.642=2148万円
-
家屋の負担付き所有権
800万円-621万円=179万円
-
土地の負担付き所有権
6000万円-2148万円=3852万円
相続税額の比較
(単位:万円)
ケース(1)(母が配偶者居住権を相続) | ケース(2)(母が自宅の土地家屋を相続) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
一次相続 | 二次相続 | 一次相続 | 二次相続 | |||
母 | 長男 | 長男 | 母 | 長男 | 長男 | |
配偶者居住権 | 621 | 0 | (消滅) | – | – | – |
家屋の所有権 | 0 | 179 | – | 800 | – | 800 |
土地の利用権 | 2,148 | 0 | (消滅) | – | – | – |
土地の所有権 | 0 | 3,852 | – | 6,000 | – | 6,000 |
小規模宅地等の減額 | -1,718 | 0 | – | -4,800 | – | – |
その他の財産 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 |
母の固有の財産 | – | – | 5,000 | – | – | 5,000 |
課税価格 | 6,051 | 9,031 | 10,000 | 7,000 | 5,000 | 16,800 |
課税価格合計 | 15,082 | 10,000 | 12,000 | 16,800 | ||
基礎控除額 | 4,200 | 3,600 | 4,200 | 3,600 | ||
課税遺産総額 | 10,882 | 6,400 | 7,800 | 13,200 | ||
相続税の総額 | 1,864 | 1,220 | 1,160 | 3,580 | ||
各人の相続税額 | 747 | 1,116 | 1,220 | 676 | 483 | 3,580 |
配偶者の税額軽減 | -747 | 0 | 0 | -676 | 0 | 0 |
納付税額 | 0 | 1,116 | 1,220 | 0 | 483 | 3,580 |
税額合計 | 1,116 | 1,220 | 483 | 3,580 | ||
一次・二次の税額合計 | 2,336 | 4,063 |
このような前提条件下の場合、二次相続まで含めた相続税の合計額で比較すると、一次相続において配偶者が「配偶者居住権」を相続するケースの方が配偶者が自宅の所有権を相続するよりも相続税額が少なくなることが確認できます。
従って、「配偶者居住権」は相続税の節税効果が期待でき、今後の遺産分割や遺言書の作成においては、「配偶者居住権」を考慮に入れて検討することが不可欠といえます。
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相続税節税のための「配偶者居住権」活用には、専門的な知識や財産評価額の算出が不可欠となります。
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